「知識伝承のAI化」が
研究員のモチベーション維持に寄与する理由

 新たな価値、新たな生活習慣をつくり上げる研究領域では、日々多くの試行錯誤が繰り返されている。理科の実験のように「これとこれを組み合わせたら、こうなるよね」とはいかない。自分の知識と経験だけでは結果が見通せず、行き詰まることも少なくないという。

「知識伝承のAI化」ツールの狙いは、高いレベルでの知識の標準化だ。新人、ベテランにかかわらず、研究員の誰もが過去の研究資料や実験データといった情報を迅速に取得できるようにすることで、情報検索にかかる時間を最大5分の1以下に短縮できたという。

「知識伝承のAI化」ツールによって、情報検索にかかる時間が最大5分の1以下になったという 提供:ライオン「知識伝承のAI化」ツールによって、情報検索にかかる時間が最大5分の1以下になったという 提供:ライオン

 研究開発本部でシステム開発をリードする藤原優一さんは、こう語る。

「研究チーム全員が過去の情報を知っている状態でスタートできれば、最初の検討からより建設的な議論ができるようになります。過去の情報と自分の知見をかけ合わせることで、新たな気付きが生まれることも期待できる。知識伝承のAI化は、業務効率化はもちろん、イノベーションの源泉にもなり得ると考えています」

ライオン 研究開発本部 戦略統括部 戦略グループ 藤原優一さんライオン 研究開発本部 戦略統括部 藤原優一さん Photo by M.S.

 今回の検証では、社内に蓄積されたデータをAmazon S3(クラウドのオブジェクトストレージ)に格納。生成AIとAmazon Kendra(機械学習を利用した検索サービス)を組み合わせ、効率的に情報を取得できるようにした。ユーザー側から見れば、ChatGPTの要領で膨大な社内データから欲しい情報を短時間で取得できる。さらに、生成AIが中身を分析・評価し、検索内容に沿って要約して表示してくれる優れものだ。

AWS伴走のもと、構想からわずか3カ月で環境を構築AWS伴走の下、構想からわずか3カ月で環境を構築。短期間でのプロトタイピングと効果検証を実現した 提供:ライオン 拡大画像表示