「画期的なアイデアを思いついた!」と思っても
過去に誰かが同じことをひらめいて結果を出している
藤原さんは、こうした仕組みが研究員のモチベーション維持にもつながると語る。
「画期的なアイデアを思いついて、一気に火が付くことってありますよね。でも、当社は100年以上ハミガキを作っているわけで、長い歴史の中では同じようにひらめき、すでに結果が出ている研究も数多くある。それを指摘したらモチベーションが下がってしまうと経験上分かっているから、先輩研究員も言いにくかったりするのです。だからこそ、自分自身で気付ける環境が必要なんです」
研究員の岩崎彩佳さんは、「本当にその通りで、私自身の経験を話してもらったみたいです」と笑う。
「過去を知らないことで、自分の勉強不足を痛感するシーンはよくあります。これからの時代、若手であっても知っているのは当たり前で、それをどう活用するかが私たち研究員の仕事なのだと思っています。歴史をたどれば、当時のニーズには合わなかったという理由で世に出なかった商品もたくさんあります。その提案が今ならマッチすることも。知識伝承のAI化によって、過去の知見の蓄積が私たちのイノベーションに直接つながるケースも増えていくのではと思います」
同じく研究員の山下恭平さんは、「品質向上につながる知見も継承していきたい」と語る。
「常に新しい発想が求められるとはいえ、ライオン品質、ライオンらしさは変えてはいけないと思っています。それには失敗やトラブルをどう解決したのか、過去の試行錯誤の情報が不可欠です。これらは必ず文書化されて残っているので、リファレンスとして容易に検索できるようになれば、さらなる品質向上に寄与するでしょう」