2024年急成長の8テーマ 日本の最強技術79社 #2Photo:Yuichiro Chino/gettyimages

自動車メーカーの“EV(電気自動車)シフト”加速で、クルマを構成する数万点の部品のほか、生産ラインも大きく様変わりしようとしている。車載半導体や車体材料ではEVに特化した高性能品のほか、割高なEV製造コストの低減を可能にする製造技術の需要が拡大している中、これらの技術分野で優位性を持つ日本の部品サプライヤーが世界的に注目されている。特集『2024年急成長の8テーマ 日本の最強技術79社』(全6回)の♯2では、EV業界の技術トレンドと市場予測、そして投資の観点から最注目の国内企業15社を厳選して紹介する。(SBI証券企業調査部長 遠藤功治)

大手7社合計の営業利益は初の8兆円超えへ
2024年からの5年間に「EV」で勝敗が決まる

 日本の自動車業界を見ると、足元の2023年度は、過去最高の利益をたたき出す企業が続出しそうだ。日本の大手自動車メーカー7社の合計営業利益は、史上初めて8兆円を超え過去最高となるもようで、個別ではトヨタ自動車、ホンダ、三菱自動車、マツダ、スズキがそれぞれ過去最高益更新を見込む。

 東京証券取引所からの「PBR1倍割れ」(PBRは株価純資産倍率)に対する改善要望もあり、自社株買い・大幅増配・政策保有株の売却が進んだことで、株価も年初来、軒並み上昇した。トヨタ、ホンダ、デンソーなど上場来の高値を付けた銘柄も多い。

 各社、大幅な上方修正となった背景には、半導体不足や新型コロナウイスルの感染拡大による物流混乱の影響などがほぼ解消し、米国を中心とした代替需要に支えられて需給は非常にタイト化したことがある。

 また、中古車価格の高止まり、EV(近年ではBEV〈Battery EV〉と呼ばれることも多くなった)の販売奨励金が低水準となり、新車価格の値上げが浸透した。自動車部品の材料となる貴金属の高騰も一服した。そこに1ドル=150円台に迫る超円安が到来したことが、業績を大きく押し上げた。

 その結果、潤沢なキャッシュフローに支えられ、各社が本腰を入れだしたのがEVを中心とした電動化である。

 23年に入り日系自動車メーカー各社から相次いで、EVに関する積極的な事業計画が発表された。トヨタは26年までに全世界でEVを150万台、30年までに350万台販売する拡販計画を掲げる一方、HV(ハイブリッド車)やPHV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)など、幅広い選択肢を用意、地域や顧客の特性に応じて、電動車のポートフォリオを形成し対応する。

 他方、米テスラやホンダはEV一択、中国BYDはEVとPHVの二択と、メーカーによってその電動化計画は大きく異なる。

 24年からの5年間は、今まで大きく出遅れていたEVの領域において、日本車がどの程度差を縮め、追い付き追い越せるのか、まさにEV領域での勝敗が決する期間といえよう。

 日本の自動車メーカーのEVシフトの加速に伴って、EV向け部品や製造技術で競争力を持つ企業の急成長が見込まれる。

次ページでは、2024年に注目のEV関連企業、計15社を厳選し、それぞれ強みとなる注目ポイントと共に、今期と来期の予想営業増益率を、銘柄表にまとめて紹介する。

図表:「EV」業界で2024年に注目の15社