【其の参 怠けるべからず ⇒ 親として最後の大仕事に臨む】

 子を持つ親として果たすべきことがあります。それがいわゆる「終活」です。分厚いエンディングノートを買って積読(つんどく)しておいても意味はありません。老後の想定課題ごとに、「現時点での希望」「支援を頼みたい相手」「それにかかわる予算と財源」を明確にして、託したい相手と共有する。これが正しい老い先への備えです。

【其の四 驕るべからず ⇒ 老いては子に従う】

 これは本当に難しいことです。老いるというのは喪失のプロセスです。老いの哀しみは私にもよく理解できます。「自分は正しい。大丈夫。まだデキる!」そう思っていても、心のどこかで不安や心配を感じているものではないでしょうか。

 人生100年時代とはいうものの、情報力や判断力は50歳を境に親子で逆転する。そういうものだと思ってください。どんなに遅くとも後期高齢者世代(75歳以降)になるまでには、老い先を託したいと思えるわが子の言葉に耳を貸すようにすべきだと、つくづく思います。

【其の五 ケチるべからず ⇒ 元気なうちから財産を引き継ぐ】

 これだけ認知症の人が増えてくると、従来の財産承継のやり方では支障が出てきます。

 最大の問題は、親が認知症になった場合でも、親の財産を子どもが使えない制度になっていることです。認知症になってしまう前に少なくとも親名義の預金を子が使えるようにしておかないと、エンディングを迎えるまでの要介護期間にかかるコストを、子が持ち出し(立て替え)しなければならなくなってしまいます。介護というのは10年続くこともままあります。数千万円が必要となる場合だってザラにあるのです。

 子どもが複数いる場合、「介護等でサポートをしてもらった分を多めに渡す」と遺言に書いたとしても、残念ながら、遺産争いの原因になってしまうことが多いのです。それを望まないのであれば、老い先の支援を頼みたい相手(子)には、まだ元気なうちからお金を渡しておくべきです。もちろん、贈与税が発生しないように配慮しながら、です。