具体的な問題があるわけではないけれどなぜだかモヤモヤする職場になっていないだろうか。そんな悩みにおすすめなのが、組織開発というアプローチだ。『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』(中村和彦監修・解説、早瀬信、高橋妙子、瀬山暁夫著)では、組織開発のはじめ方を成功事例とともに紹介している。本記事では、組織開発的な観点から職場にありがちな悩みの改善策を著者に聞いてみた。
【お悩み】部下と定期的に1 on 1ミーティングを実施している管理職も増えているようです。しかし、いつも形式的な業務報告ばかりになり、なかなか本音を話してくれていないように感じる方も多いのではないでしょうか。1 on 1ミーティングの意義とはどのようなところにあるのか、組織開発の専門家に聞きました。
【回答】本音を安心して話すことが「あなたのため」だということを共有しましょう
忙しい業務の合間に1 on 1ミーティングの機会を設けているのに、まったく活用できていないのはつらいですよね。
まず、1 on 1ミーティングが何を狙いとした場なのか、部下と管理職のあいだで認識を共有することが大切なのではないでしょうか。
あなたはなぜ部下の本音を聞きたいのでしょうか。
本当に部下の成長と幸せを望んでいるのでしょうか。
例えば、管理職であるあなたが、上長に報告するために本音を聞こうとするなら、部下にはその本心がわかります。
そんな風に1 on 1ミーティングの場を「利用されている」と感じさせてしまったら、部下からの信用は生まれません。
部下には「わたしのためを思って聞いてくれているんだな」と分かってもらう必要があります。
直接会って話すことだけが「対話」ではない
1 on 1ミーティングは進捗確認や情報収集の場ではなく、原則として「部下の話を聞く場」です。
まずは安心して話していいのだ、と理解してもらうことがスタートです。
とはいえ、「そうですか、実は……」と本音を語りはじめるということにはならないでしょう。
このため、日頃から「関係性の質」を整えておくことが必要です。
「関係性の質」を上げるには、まずは話を聞く側が本音を話すことが必要です。そうでなければ、相手は本音を話せないはずです。
また、あなたに他意がないとしても「相性」の問題もあります。
私の経験ですが、全然話をしてくれない部下がいました。でも、面倒見がよく、その部下は若手からとても慕われていました。
なのになぜ自分には話してくれないのか、私にはわかりませんでした。
ところがあるとき、彼がケガで入院することになってしまいました。
そこで、メールでやり取りをはじめたところ、すごい勢いで自分の話をしてくれるようになったのです。あとで聞いたところによると、対面では私が話すスピードについていけない、というのが真相でした。
このように、コミュニケーションの手段も、人との組み合わせによって最適解が違うのではないでしょうか。
(取材・文 間杉俊彦)