「行動経済学」について理解を深めることは、様々なリスクから身を守るためにも、うまく目的を達成するためにも、非常に重要だ。『勘違いが人を動かす──教養としての行動経済学入門』を推薦する、東京大学大学院経済学研究科教授の阿部誠氏は、著書『大学4年間の行動経済学が10時間でざっと学べる』などで最先端の知見をわかりやすく紹介している。私たちは仕事や日常生活に行動経済学をどう活かせばよいのだろうか? 阿部教授にお話しを伺った。

【東大教授が教える】「目標だけ立てて終わる人」と「確実に目標達成できる人」の決定的な差Photo: Adobe Stock

「新年の目標」は年越し前に決める

お正月に「新年の目標」を立てる人は多いいと思います。

しかし、実は「新年の目標」は「年を越す前」に定めておいた方がいいのです。
つまり、今のうちに「来年の目標」を考えることで、目標の達成率が高まります。

年内に「来年の目標」を考えるメリットは「今年の反省」を活かすことができるからです。
年が新しくなると「去年のことは過ぎ去ったこと」と感じてしまうので、振り返りをするのが難しくなります。

そのため、新年を迎える前に「今年の振り返り」をしっかり行うことが、まず大切です。

そして、「来年の目標」を「どのように達成するか」のプラニングも同時に考えてください。

目標が行動計画に落とし込まれることで、さらに達成する確率は高まります。

何より、年内に目標と行動計画を考えておくことで、「新年早々、すぐにスタートを切る」ことが可能となります。

新年になってから目標を立て始めると、その間は行動に移すことができず、スタートから出遅れてしまいます。

お正月から目標達成に向けて動き出すつもりで、年内に目標と計画を考えておきましょう。

目標を達成するためのコツ

目標を設定するときのコツは「行動できるように細分化すること」と、「臨機応変に対応できる柔軟性をもたせること」です。

細分化とは、たとえば「新年の目標」を「月ごとの目標」「週ごとの目標」「日ごとの目標」などの短期・中期目標へと分解し、具体的なアクションプランに落とし込むことです。

「短期・中期目標が達成できない」場合も、あると思います。達成できなかったときに気持ちが落ち込んで、自信を失って継続できなくなることが考えられます。

そうならないように、「第二の選択肢」や「余白」を設けるような柔軟性も目標達成には必要となります。

また、目標達成に向けた行動は、ぜひ記録に残すようにしてください。

たとえば、マラソンでは「何キロを何分を走ったのか」の記録をつけるとタイムが短くなったり、ダイエットでは毎日の体重を測って記録することで体重が減る傾向が高まります。

「フィードバック」があることで「最終的な目標」に近づいているという結果が見えるので、より目標達成のインセンティブが高まるのです。

人は目標が近づくほど、そこへたどり着くためにより多くの努力を払うようになります。これは「目標勾配効果」として知られており、企業のマーケティングでも(スタンプカードなど)様々な場面で活用されています。

目標勾配効果を利用してモチベーションを上げるには、ゴールをたくさん用意するのが一番効果的です。

(本稿は『勘違いが人を動かす──教養としての行動経済学入門』の発売を記念し、東京大学大学院経済学研究科教授 阿部誠氏へのインタビューをもとに作成しました)