美術館に行っても「きれい!」「すごい!」「ヤバい!」という感想しかでてこない。でも、いつか美術をもっと楽しめるようになりたい。海外の美術館にも足を運んで、有名な絵画を鑑賞したい! そんなふうに思ったことはないでしょうか? この記事では、書籍『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から、ご指名殺到の美術旅行添乗員、山上やすお氏の解説で「知っておきたい名画の見方」から「誰かに話したくなる興味深いエピソード」まで、わかりやすく紹介します。
登場人物は400人以上!? ミケランジェロの描くド迫力の名画
まず注目は画面中央の下部。天使たちが最後の審判の合図であるラッパを吹き鳴らしていますね。
すると画面の左下、大地の中から石板を押し上げて、亡くなった人たちがムクムクとお墓から出てきています。
─ほんとだ! まるでゾンビ映画の一場面みたいですね!
はは(笑)。まあニュアンスはそんな感じでしょうね。で、その人たちはイエスの元に行くために天使に連れられて上昇していきます。
そして中央のイエスに到達するんですが、その周りをご覧いただきましょう。
イエスのすぐ左にいるのがイエスの母マリア。イエスの右側にいる、手に何か金と銀の物を抱えている人物が一番弟子ペテロです。
─なんでわかるんですか?
バチカン市国の成り立ちでもお話ししましたが、イエスは天に昇られるときに天国の鍵をペテロに渡したと言われています。
なので、金と銀の鍵を持っているのがペテロとなるんです。
ちなみに銀の鍵は地獄の鍵なんだとか。で、マリアの左二人目の毛皮のビキニパンツみたいなのをはいた人が洗礼者ヨハネと言われています。
─ヨハネきわどい…!! これで隠れるのか…!?(汗)
そのお話はまたあとでしましょう(笑)。
そしてその周りにいる人々もイエスの教えのために命を落とした殉教者たちや、イエスの教えにしたがった聖人たちがたくさん描かれていますね。
─ほんと、すんごい数の人たちですね。これ、全員で何人くらい描かれているんですか?
だいたい400人くらいと言われています。
─400人!! すごいですねー!! あの、画面の左右の上に塊で飛んでいる人たちは誰なんですか? 左の集団は十字架を持ってますけど、右の集団が持ってるのは…柱ですかね?
彼らは天使です。
─天使!? 天使って羽が生えてるんじゃ…。
そうなんです、通常はね。
でもミケランジェロは現実主義者だったので天使に羽は描きませんでした。
だからラッパを吹いている天使たちにも羽がないでしょ?
当時は結構批判もあったんですけどね。で、左の天使たちが持っているのは十字架。右の天使たちが持っているのは、おっしゃるとおり柱です。
イエスは十字架に架けられる前に柱に縛られて鞭で打たれているんですが、その柱が描かれています。つまりどちらもイエスの受難のシンボルということですね。
ちなみに十字架の天使たちの少し右にいる天使たちは茨の冠を持っているんですよ?
─ほんとだ!! ちゃんとイエスの頭のサイズになってる!
そして審判の後、善人は画面上部の天国へ。悪人は画面下部、右下にぽっかりと朱色の口を開けた地獄に向かうことになります。
その手前には地獄行きの船から降ろされる悪人たちが、地獄の入口の前には地獄の門番ミノスも描かれていますよ。この門番も怖い顔でしょ?
─確かに…。体に蛇を巻き付けて耳を尖らせて…極悪人みたいです!!
ですよね(笑)。これこそ、ミケランジェロがありあまる想像力をふんだんに吐き出した最後の審判なんです!
(本記事は山上やすお著『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から一部を抜粋・改変したものです)