森保監督が「指導方法」を変えた
納得の理由とは?
次に挙げられるのが、指導方法の変化だ。第2次体制から名波浩、前田遼一コーチが新たに入閣し、齊藤俊秀、下田崇コーチは引き続き指導することとなった。4人はそろって元日本代表の肩書を持つ。森保監督はこのコーチ陣に役割を委譲し、自らが“全部教える”指導を減らしているという。
具体的には、名波コーチが攻撃全般、前田コーチがストライカー、齊藤コーチが守備、下田コーチがキーパーをそれぞれ担当。全般を統括する形になった森保監督は「チームが機能するために、より有効に時間を使っています」と語る。
「簡潔に言うと、私が全部をやっていると全部が薄くなる。カタール大会までの4年間はコンセプトを共有する上で、練習もミーティングもコミュニケーションもすべて自分でやりたいと思っていました。
けれど、それぞれのコーチが役割と責任を持ち、チームを勝たせて、選手を成長させるために指導してもらった方がより深く、より広く伝わっていく。その上で私とコーチ陣が情報を共有すればチームの機能性もより高まる、と。
そのなかで名波、前田両コーチにはカタール大会までの代表を外から見ていて、さらに成長するためには何が必要なのか、と感じていた点を思い切って実践してもらえるような、本人たちが持っているものを自由に出してもらえるような環境作りをしているつもりです」(森保監督)
だからといって、森保監督と選手のコミュニケーションがゼロになったわけではない。例えば10月シリーズのカナダ代表戦。後半開始直前のベンチ前で、この試合はリザーブ(控え選手)だった久保建英と、森保監督が身ぶり手ぶりで言葉をかわしている光景が大きな話題を呼んだ。
まるで森保監督が久保に教えを請うているような光景は、ネット上を「久保建英ヘッドコーチ」や「将来の代表監督」などと騒がせた。森保監督は後になって、会話の内容をこう明かしている。
「詳しくはお話しできないが、久保が普段所属しているレアル・ソシエダで、ゴールキックからのビルドアップの部分でどのようにしているのか、というのを少し聞いていました」
きっかけはカナダ戦で右サイドバックとして先発した毎熊晟矢(まいくま・せいや/セレッソ大阪)と、久保がかわしていた会話だった。カナダのプレスに戸惑っていた毎熊に、久保がアドバイスを与えていたのだ。
「選手同士で話をしていたので、何を話しているんだろうと思って聞いてみたら、それが最終ラインからのビルドアップで、結果的に久保ともそういう話になりました」(森保監督)