日本人がルールメイク側に
立てないのはなぜか

徳成 だから本当は日本人がみずからルールメイキングできるといいんですけど、残念ながら英語力の問題と、国力の問題で……。ESG(Environment・Social・Governanceを考慮した投資活動や経営・事業活動を指す)に関するさまざまなルールもヨーロッパが作っているし、ISO[スイスのジュネーブに本部を置く非政府機関 International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称。ISOの主な活動は国際的に通用する規格を制定すること]だってヨーロッパの組織。ヨーロッパ人は、アメリカに対抗するため、環境問題などでルール作りを主導しているんです。日本は、アメリカとヨーロッパの双方のルールに従うことになる。

 本当は日本発のルールを作れるといいんですけど、残念ながらそれは難しい。ならば、その問題をわかっている我々おじさんたちが、「そこは適当でいいよ」と合理的に手を抜くといいますか、リスク・アプローチで「ここまではダメだけどこの辺はいいよ」と言ってあげないと、若い人たちはみんな完璧にルールを守ろうとしてしまう

 そうすると、企業の収益力、ひいては日本の経済力がますます落ちて、国際競争力がなくなるという、まさに自縄自縛に陥りがちだと思いますね。

堀内 私もアメリカで働いてみて感じたのですが、残念ながら日本は第二次世界大戦で敗戦国になったことで、国際社会での立場が弱いんですよね。国連など国際機関でのポジションも少ないし。今、国連関係の機関で日本人がヘッドを取り続けているのはMIGA(多数国間投資保証機関)ぐらいですからね。

徳成 そうですね。その歴代長官の中には本田桂子さんもいる。日本人の女性がヘッドだったこともある、珍しい機関ですね。彼女は昨年、『ESG投資の成り立ち、実践と未来』(日経BP)という本を出されて話題になりましたよね。

堀内 でも、日本人が取っているポジションといえばそれぐらい。韓国と比較すると、ヘッドはもちろん、海外で仕事している人、国際機関に就職している人も向こうのほうがだいぶ多い印象ですよね。

 そこで思ったのが、日本は戦争に負けてすごく内向きになって、とにかく経済を成長させることに集中しようと考えた。その中でいい製品を作って輸出するという武器を身に着けて海外に出て行くようになった。逆に言えば海外との接点がそれぐらいしかなかったということですよね。

徳成 偏ってますよね。

堀内 だからルールメイクができない、英語ができないというのは、当然といえば当然なわけで。少し話が逸れますが、そもそも日本語というのは、文法構造から音まで、英語とまったく違うから、英語を学ぶ上ではとても不利ですね。これほど違う言語が地球上にあるのかと思うぐらい。

徳成 日本語は母音の数が少ないですからね。中国語などは母音が多いので、中国人は英語の発音も上手い人が多い。彼らは英語の音も聞き取りやすい、と言われていますし。僕はTOEICは900点以上だし、海外駐在したし、世間的には英語ができると思われていますが、やっぱりダメなんですよね、音が……。

堀内 私もまさに音の問題で、いまだに英語には苦手意識があります。小学生、遅くとも中学生ぐらいまでに海外に住んでいた人は、聞き取れる音の数が全然違うのではないでしょうか。

徳成 でも今の若い人は、YouTubeとかでいろいろ聞けるじゃないですか。これはいいですよね。僕も学生時代にこんなものがあったら、もっと上手くなっていたと思います。タダで勉強できますから。

 あと「Otter」など、自分が喋った英語を文字に起こしてくれるアプリがあるじゃないですか。あれも便利ですよね。ただ使ってみると、自分が喋ったのとは全然違う英文が出てきて、僕の発音はこんなふうに聞こえているんだ……と愕然とするんですけど。

堀内 留学するにはTOEFLでの高得点が必要なのですが、私が留学のためにTOEFLを受けた頃というのは、ヒアリングのテストがありませんでした。日本人は妙にペーパー試験は得意だから、点数だけはすごく高いわけです。だから欧米の人からすると、なんでこんなに喋れないヤツがこんなに高得点を取っているんだ?と不思議でならないみたいです。

徳成 よく喋れないのに文章を書かせると、文法的に完璧なものを作ってくるから、「日本人って変だよね」と英語ネイティブに思われる、というのが、僕たち世代の「あるある」でしたよね(笑)。

堀内 やはり英語の音に関しては、早いうちに身に着けたほうがいい。私のイメージだと、6歳から14歳ぐらいまでの間に、3年以上海外に住んでいれば、相当聞き取れるし、きれいな発音になると思います。

徳成 そのぐらいの年齢だと、グラマーもきちんと身に付きますしね。行動範囲も広がってきている年齢だから、単語を覚える量も増える。……という英語の苦労話はいくらでもできてしまうので、これぐらいでやめておきましょう(笑)。

(第2回に続く)