PBRが0.3倍の地銀が
上場を続けている意味とは

徳成 それでいくと地方銀行なんて、金融庁も言い始めていますが、上場なんてやめたらいいんじゃないの? いう考え方もありえますよね。PBR(株価純資産倍率)が0.2倍とか0.3倍とかで、本当に上場企業と言えるの? と。人口が減っている地域で、間接金融業で成長することは極めて難しい。

 でも解散価値が1倍を割っているからといって、じゃあその企業に価値がないのかというと、決してそういうことではない。その地方の銀行は必要なんです。そうじゃないと地域経済は成り立ちませんから。

 そう考えると、上場する意味はあるのか? となってくるわけです。別に株価なんかなくても、地場企業や地元の人たちが、その銀行にお金を資本という形で託して、そこから1%、2%でも安定した配当があれば、それでいいんじゃないかという話も出てきています。

堀内 ですから、地銀の方には大変申し訳ない言い方なのですが、信用金庫や信用組合のほうが地場企業と距離が近いように思います。信金や信組というのは本当に地場企業と近くて、親身になって相談に乗ってくれるんです。地方における社会的な視点というのは、明らかに信金・信組のほうがしっかり持っている。

 国に置き換えて考えてみると、メガバンクというのは国。地方銀行は都道府県で、信金・信組は基礎自治体にあたると思います。それで、住民とダイレクトに接しているのは基礎自治体だけで、国とか都道府県というのはほとんど直接接していないんですよね。

 だから「どう生きるのか」ではないですが、地銀というのは何なのか、きちんと自分たちで定義付けなくてはいけないと思います。

徳成 前の記事で、堀内さんは「自分のパーパスを持て」ということをお話しされましたが、それは企業にも言えることですよね。自分たちはどういう会社なのか認識することが大事なんだけど、それが成されていないのは多分、日本人の「なるべく平均点でいよう」という気質みたいなものが関係しているんじゃないかと思います。なるべく目立たないでいるというか、普通が大好きというか。

 でもそれだと多分、もう厳しいんでしょうね。だから自分の特徴を、尖がったところをどう伸ばしていくか、そういう意識を持たないと。そのために教育も変えなきゃいけないし、個々人も自己主張していかなきゃいけない。誰かが考えてくれるのではなく、自分で自分のことを考えなければいけなないという時代に、多分なりつつある。

 それって日本人はすごく苦手なことだし、子どものときからそういう教育をしていかなければならないから時間もかかります。でも、日本のどの県に行ってもほぼ同じスーパーがあって、駅を降りてもどこだかわからない、みたいなことでは良くないですよね。特徴がなくなってしまうし、つまらないし。日本はずっと効率重視できた結果、そうなったんでしょうけど、意図的に逆に振っていかないとダメですよね。

堀内 日本は明治維新以降、フランスやドイツにならって中央集権型の国を作ろうとして、次に戦争に負けたらアメリカを真似て、今はこうなってしまいましたと。でも自分が何者であるかを人に定義付けてもらわないとわからない、というのはもうやめましょう、ということです。当たり前の話なのですが、そうした当たり前の話がなかなかみんなできなくなっているというところに、日本の悩みの多くがある気がします。

徳成 パーパスとか、「自分は何者だ?」ということを会社としても考えよう、みたいな流れが生まれてきています。それはいいことですよね。今までは、会社は潰れないこと、存在していること自体が価値でした。それは否定しないですよ。だって会社があったほうが失業者も生まれないし、いいことです。

 だけどその会社の社畜みたいになって、長時間労働して、何のために働いているかわからなくなって、これが幸せなのか? みたいなことになったらつまらない。

 そうではなくて、自分たちがやりたいことは何だったんだ? ということを考えて、もしもそれがないとわかったなら、本当は会社なんて解散してしまえばいいんですよ。たしかに今までは、会社が潰れると社会的不安をあおるというのがあったけど、今はボコボコとスタートアップができていますから。

 かつ、大企業間でも人材の流動性が高まっている。多分、今の状況のほうがまっとうな資本主義だと思います。岸田首相が「新しい資本主義」と言っていますが、まずは「普通の資本主義」になりましょう、と僕は思っています。つまり、目的を終えた企業は退出し、新しいスタートアップが勃興する。そうした新陳代謝がある社会経済にしたいところです。

日本の大企業は、世界的には「中小企業」にすぎない徳成旨亮(とくなり・むねあき)
株式会社ニコン取締役専務執行役員CFO。
慶應義塾大学卒業。ペンシルベニア大学経営大学院(ウォートン・スクール)Advanced Management Program for Overseas Bankers修了。三菱UFJフィナンシャル・グループCFO(最高財務責任者)、米国ユニオン・バンク取締役を経て現職。日本IR協議会元理事。米国『インスティテューショナル・インベスター』誌の投資家投票でベストCFO(日本の銀行部門)に2020年まで4年連続選出される(2016年から2019年の活動に対して)。本業の傍ら執筆活動を行い、ペンネーム「北村慶」名義での著書は累計発行部数約17万部。朝日新聞コラム「経済気象台」および日本経済新聞コラム「十字路」への定期寄稿など、金融・経済リテラシーの啓蒙活動にも取り組んできている。『CFO思考』は本名での初の著作。