日本経済復活およびビジネスパーソン個人の成長の秘訣を示した『CFO思考』が、スタートアップ業界やJTCと呼ばれる大企業のビジネスパーソンを中心に話題となっている。5刷3万3000部(電子書籍込み)を突破し、メディアにも続々取り上げられている話題の本だ。
本書の発刊を記念して、著者の徳成旨亮氏と、多摩大学大学院教授の堀内勉氏の対談が実現。「世界で活躍できる子に育てるために親ができること」「ビジネスパーソンの教養」「企業倒産の意味」といったテーマについて、6回にわたってお届けする。(撮影/疋田千里、構成/山本奈緒子、取材/上村晃大)

「大学生時代が知的レベル最盛期」の人がこれから見直すべきこと

日本のビジネスパーソンの
時間の使い方は「異様」

――今回は、CFOと教養、をテーマにお話を聞けたらと思っているのですが。

徳成旨亮(以下、徳成) 前回、教育を受けられる金銭的余裕があるか、といった話をしましたが、そうは言っても日本国民は教育を受けられます。学校はもちろん、本だって図書館に行けば買わなくて読める。ただ、学ぶ時間がないと言うのです。

堀内勉(以下、堀内) これは前著の『読書大全』にも書いたのですが、日本のビジネスパーソンは時間の使い方が下手というか、キツイ言い方をすると、間違っていると思っています。

 海外のエグゼクティブというのは、Ph.D.(博士号)を持っている人も多くて。マスター(修士号)を持っている人となると、その辺に普通にいます。でも日本の場合、大学院に行く人というのは圧倒的に少ない。これは、日本の場合、大学院に行くと就職がままならなくなってくる、という意味不明な実情もあるかと思いますが。

 話を戻しますと、時間の使い方が下手といった理由のひとつは、同類で群れることに時間を使い過ぎている、ということがあります。そうすると学ぶ時間が減るのはもちろん、自分でものを考えるという時間も極端に減ってしまいます。

 今問題になっているのは、日本男性の家事・子育てをする時間が非常に短いということですが、それと同様に、学ぶ時間も少ない。エグゼクティブの皆さんは、ずっと一緒にゴルフしていますからね。ゴルフしないと、仲間外れになってしまいますから。仮にゴルフをしなかったとしても、ずっとみんなでお酒を飲んでいるじゃないですか。

 わかるんですよ、私もサラリーマンをやっていましたから。一緒にいないと外されるんですよね。だから女性などは、最初から参戦できないのです。男性でさえ一緒につるんでいないと外されるのだから、女性なんて最初から対象外なんです。そういう時代でしたね、私のサラリーマン時代は。

 以前に大前研一氏の「人間が変わる方法は3つしかない。1つは時間配分を変える、2番目は住む場所を変える、3番目は付き合う人を変える」という言葉を紹介しましたが、頑張って意識的に時間配分を変えないといけない。

 そこで本を読んでもいいし、一緒に話して為になる人と話すのもいいし、何をしてもいいのですが、もう少し頭を使うというか、深く考えることをすべきだと思うのです。

 自分が今どのような思考の枠組みにとらわれていて、世の中をどのような角度で見ているのか、ここの角度を変えてみたらどのように見えるのか……、そういうことを考えないと成長しませんから。

 大学に入った時点が知的レベルの頂点で、そこからひたすら落ちていくというようなことになると、勝負の勝ち負けどころか勝負にもならないなという感じがあって。そこも見直す必要があると思うんですよね。

「大学生時代が知的レベル最盛期」の人がこれから見直すべきこと堀内勉(ほりうち・つとむ)
多摩大学大学院経営情報学研究科教授、多摩大学社会的投資研究所所長、一般社団法人100年企業戦略研究所所長、一般社団法人アジアソサエティ・ジャパンセンター理事兼アート委員会共同委員長、ボルテックス取締役会長他。
東京大学法学部卒業、ハーバード大学法律大学院修士課程修了、東京大学Executive Management Program(東大EMP)修了。日本興業銀行(現みずほFG)、ゴールドマン・サックス証券、森ビル・インベストメントマネジメント社長、森ビル取締役専務執行役員兼最高財務責任者(CFO)、アクアイグニス取締役会長等を歴任。資本主義の研究をライフワークにしており、多くの学者・ビジネスパーソンと「資本主義研究会」を主催している。著書に『人生を変える読書』(学研)、『読書大全』(日経BP)、『ファイナンスの哲学』(ダイヤモンド社)、『資本主義はどこに向かうのか』(日本評論社)などがある。