「競争効果」と「効率効果」で
政治の腐敗を根絶する

 では、現状の腐敗を根本からなくすためには、どうすべきなのか。その答えは、この論文にも登場する「競争効果」と「効率効果」にある。

 まず、競争効果を利用することについてだ。

 例えば、ある企業が政治家にお金を払って特定の政策を実行してもらおうとする。これが汚職だ。企業はその政策が自分たちに利益をもたらすから、政治家に影響を与えようとするわけだ。

 一方で、私たち国民の側も政治家の行動に影響を与えたいと思っているが、私たちの目的は公共の利益を守ることだ。

 ここで競争効果が登場する。それは国民が「企業の提供する金銭的な価値と同等かそれ以上の影響力」を政治家に与えないと、汚職が起こる可能性があるということだ。つまり、私たち国民が政治家に対して襟を正す十分な動機を提供しなければ、政治家はお金を払う一部団体の方へと引き寄せられていってしまうことになる。

 今回の裏金問題でいえば、こうした裏金問題を起こした連中を完膚なきまでに、評判から名誉から何から何までたたき落として後悔させるしかない。そうすれば、2度と裏金問題を起こそうと思わないだろう。

 次に、効率効果だ。効率効果とは、国民と企業のどちらが政治家に対して魅力的な報酬を与えられるかによって、政治家の政策が左右される現象のことだ。例えば、政治家が、ムダとしか考えられない補助金を出さないことを公約し、それが実行されたときに国民が投票や支持を約束することができれば、政治家は「効率的な」政策を採用しやすくなるということだ。

 米国では、ほとんどの共和党議員が「任期中のあらゆる増税に反対する」という署名を行っているが、実際、この過酷な約束を実行すると、政策効果のない補助金などに支給する財源などなくなってしまう。しかし、共和党議員がこの署名をすると、選挙で保守系団体の強力なネットワークによる支持が得られ、選挙で優位になることは有名な話だ。

 その結果、ムダな政策の原資も腐敗も絶たれていく。日本でもこうした政党が生まれることを期待しよう。

 さて、今回の話をもう一度整理すると、以下のような結論に至るのではないか。

(1)透明性は高い方がいいが、政治資金の透明性を高めても腐敗はなくならない

(2)不正や腐敗には、厳しい姿勢で徹底的に臨む。やってしまったことを政治家に激しく後悔させる。今回は関係ないが、これからやりかねない政治家たちを震え上がらせる必要はある

(3)補助金や規制など腐敗を生む政策を原則しない、させない社会風土をつくっていく

 この三つで、日本は腐敗政治から立ち直ることができるだろう。