ペーパーテストを有利に戦うために塾がある。塾は、学問的な興味を刺激するというよりは、入試問題の分析から逆算して高得点を取るのに最も効率が良い教材とカリキュラムを開発し、生徒たちに与える。

 大量の課題をこなす処理速度と忍耐力があり、そもそも与えられた課題に疑問を抱かないある意味での“鈍感力”を持っていると、今の社会では受験の“勝ち組”になれる。もちろん皮肉である。

 人に言われた通りに素直にやるということも時には必要かもしれないが、そればかりに慣れてしまうと、自分らしい人生を歩む上で大切な何かを失う。大切な何かとは、いうなれば、自分で自分の道を選び取る胆力みたいなものだ。

 憧れの学校に行くために努力を重ねることは素晴らしいことだが、受験勉強や受験システムに過剰適応しないように気をつけねばならない。

「良い学校」よりも「面白い学校」を選ぶべき理由

 テストの点を取るという意味では効率が悪くても、回り道でも、ああでもないこうでもないと自分なりに試行錯誤を繰り返し、「私はこうやって勉強するとよく身に付くぞ」「私はこうやって勉強している時が一番楽しい」という、自分なりの学びのスタイルに気付いて、身に付けられたら、それは一生の財産になる。一生学び続けられる。学ばずにはいられない人になる。なぜなら、学びは本能だから。

 本来、そういう経験をするために学校はある。特に中高時代はそういう時期だ。だからこれから学校を選ぶ人は、そういう経験をたくさんさせてもらえそうな学校を選んでほしい。

 もっといえば、「教えてもらったことは何にも覚えていないけど、楽しい授業だったことはいつまでたっても忘れないなあ」と思えるのが人生を豊かにしてくれる授業である。だから、受験対策に秀でた先生よりも、教科愛にあふれる面白い先生がたくさんいる、面白い学校を選ぶのがおすすめだ。