この記事では、女子のポニーテール禁止の理由として「うなじがセクシーで男子を誘惑するのでダメだと言われた」という例が紹介されている。さすがに極端なケースではないかと思いたいが、とはいえ校則の多くが「集団の中で風紀を乱さないように」といった理由であることを考えると、案外少なくないのかもしれない。

 中には生徒が声を上げたことにより校則を変えたケースも報道されているが、そのような変化が見られつつあっただけに、「水滴チェック」が一部で残っている様子であることに改めて驚く。

 1980年代、90年代には「校内暴力」といえば荒れた生徒による教師への暴力のことで、教師から生徒への体罰は問題視されてこなかった。ドラマの中で教師が生徒を順にビンタするシーンが「名場面」として放映されていたし、今の40代以上は児童・生徒への体罰が当然のことだった時代を過ごしている。親たちも「子どもを先生に躾けてもらうのはありがたい」と思っていた時代だ。

 今でも特に部活動で行き過ぎた指導(体罰)は見られるとはいえ、昔よりは体罰に対する世間の目が厳しくなった。大人を指導する目的で殴ったら犯罪なのだから、子どもに対してだって同様であろうという意識に徐々に社会が移行しつつある。

文科省も腰を上げた
問われる教育現場での「生徒の尊厳」

 冒頭で述べた通り、近年では「性的同意」や「性的自己決定権」への意識が高まり、学校で行う性教育が改めて見直されつつある。

 たとえば、学校で行われる健康診断では、脱衣して並ばせる習慣があったが、今月、文科省が原則として着衣のまま検査を受けてOKとするように通知を出した。

【参考】
「学校の健康診断、検査に支障なければ原則『着衣OK』文科省が通知」(2024年1月22日/朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASS1Q66GCS1QUTIL011.html

 これについては、上半身裸での検査に疑問の声が上がった際、「集団検診での時短のためにはやむを得ない」とか、「正確な検査のためには必要だ」といった声があったと記憶している。しかし通知が出たということは、着衣のままでも基本的に検査は可能であると判断されたのだろう。

 今後も、教育現場での指導はなるべく児童・生徒の尊厳を守る方向に改善していってほしい。それぞれの尊厳が守られて初めて、他者との相互理解も進むのではないか。