車載デバイスが走行データを解析
サービス浸透でディーラーの存在感低下

 スマートドライブは、2013年に設立されたベンチャー企業だ。現在社長を務める北川烈氏が大学院在学中に起業。クルマから収集した移動データを解析する事業を手掛けており、22年には東証グロース市場に上場した。

 移動データの収集には、自社で開発したデバイスを使用する。シガーソケットに挿すだけで、位置情報や走行距離、ドライバーの急ブレーキの頻度などを収集できる。ETCや車載カメラでも収集可能で、このデータを運送会社やタクシー会社で働くドライバーの勤務管理や、業務効率の改善などのサービスに活用する。

 さらに走行データは、保険会社や大手自動車メーカーにも提供している。下の図がスマートドライブのビジネスモデルを示したものだ。

 これまで、保険会社は事故実績を基に保険料を算定していたが、スマートドライブのサービスにより、ドライバーの運転挙動に応じて保険料が変動する、いわゆるテレマティクス型の保険を提供できるようになるのだ。

 急ブレーキや、急ハンドルの回数が少なければ安全な運転をしていると認定され、ユーザーはディーラーを介さずこれまでより安い保険に入れるようになる。

 大手自動車メーカーへのメリットも大きい。これまで、顧客管理は全て街のディーラーに任せており、直接ユーザーとコミュニケーションを取ることが難しかった。だが、可視化されたデータを収集できれば、顧客情報を得るだけでなく、インターネット販売の際に走り方に応じた新車を提案するなど、新たな展開が可能になる。

 現在、保険会社や自動車メーカーとの協業件数は多くないが、今後このサービスが自動車業界全体に浸透すれば、ディーラーの存在感低下は避けられない。

ディーラーの人手不足解消にも貢献
CASE対応に向け共存不可欠

 スマートドライブのデータ解析のサービスは、ディーラーにとってメリットがないわけではない。

 例えば、決められた期間が来たら一律に実施する点検ではなく、車両の利用状況に合わせたオーダーメイド型のメンテナンスが実施できるようになる。そのため、利益率の低い点検を減らし、付加価値の高いオーダーメイド型の点検を増やすことができる。人手不足の解消にも役立てられる。

 CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング&サービス、電動化の四つの技術トレンド)への対応が求められる中で、スマートドライブのような独自技術を持つベンチャー企業との共存がディーラーの生き残る道になるのかもしれない。

 ただし、従来からの定期点検をオーダーメイド型のメンテナンスに切り替えていくような経営改革に着手できるディーラーばかりではない。今後は、データを活用できたディーラーと、ドル箱を奪われるだけのディーラーとの格差は拡大するだろう。新たなテクノロジーが販売店の再編を加速することとなる。

Key Visual:SHIKI DESIGN OFFICE, Kanako Onda, Graphic by Kaoru Kurata