私たちはふだん、人体や病気のメカニズムについて、あまり深く知らずに生活しています。医学についての知識は、学校の理科の授業を除けば、学ぶ機会がほとんどありません。しかし、自分や家族が病気にかかったり、怪我をしたりしたときには、医学や医療情報のリテラシーが問われます。また、様々な疾患の予防にも、医学に関する正確な知識に基づく行動が不可欠です。
そこで今回は、21万部を突破したベストセラーシリーズの最新刊『すばらしい医学』著者・山本健人氏(医師・医学博士)にご登壇いただいた、本書刊行記念セミナー(ダイヤモンド社「The Salon」主催)のQ&Aセッションの模様をお届けします。(構成/根本隼)

「セカンドオピニオンを聞きたい」と言ったら、主治医は怒る? 怒らない?Photo:Adobe Stock

実は、セカンドオピニオンは「ウェルカム」

読者からの質問 セカンドオピニオンは、保険が使えず、費用が高額なのがネックだと思います。

 家族や自分が抗がん剤治療・手術などを必要としたとき、セカンドオピニオンを使うべきかどうか、どのように判断すればよいでしょうか。

山本健人氏 一般的に、セカンドオピニオンというシステムは、いくつかの点で誤解されがちです。

 まず、「ほかの病院の意見を聞きに行ったら、主治医がムッとしないか心配だ」という声をよく聞きますが、セカンドオピニオンの話を切り出されて嫌な顔をする医師は、基本的にいないと考えてください

 主治医の見解とセカンドオピニオンが一致した場合、はじめに提示した治療方針への信頼度が高まるでしょう。逆に見解が一致しなければ、主治医は自分の治療方針をもう1度じっくり患者に説明する機会が得られます。

 そのため、意見が一致するしないにかかわらず、セカンドオピニオンを聞きに行くことで、当該の病気や治療に対する患者の理解は深まります。医師の多くはこのように認識しているので、セカンドオピニオンはむしろ「ウェルカム」なのです。

 ただ、あくまでセカンドオピニオンは「意見を聞くだけ」であって、診察・検査・治療はしてもらえません。しかも、健康保険は適用されないので、全額自己負担になります。病院によって値段はまちまちですが、それなりにお金がかかるのが現状です

 また、統計上、セカンドオピニオンと主治医の意見が一致する可能性は7割以上ともいわれています(*)。これは、患者数が少ない「希少疾患」の場合を除いて、医師たちは最も信頼できるエビデンスをまとめた「診療ガイドライン」を参照して治療を提供しているためです。

(*)参考ページ:https://www.az-oncology.jp/cancer_treatment/secondopinion/(著者監修)

 つまり、セカンドオピニオンを聞きに行くと、治療開始が遅れたり、お金が余計にかかったりするデメリットもあるということです。これらのポイントを総合して、セカンドオピニオンを活用するかどうか判断してみてください。

(本稿は、ダイヤモンド社「The Salon」主催『すばらしい医学』刊行記念セミナーで寄せられた質問への、著者・山本健人氏の回答です)