「子どもを産まなかったほうが問題」「セクハラ罪はない」など、多くの失言を繰り返してきた麻生氏であるが、ルッキズム(容姿や身体的特徴に基づく差別や偏見)やマンスプレイニング(相手を見下すように知識を披露したり評価を下したりすること)、あるいはホモソーシャル(ヘテロ男性だけなど、均一性の高い空間)の問題に若い世代ほど敏感であることを考えると、これほど時代錯誤な副総裁もいない。

 輪をかけてお粗末なのが「女性が日本の外務大臣になった例は過去にないと思う」と事実誤認を述べた点だ。田中真紀子氏、川口順子氏が外相を務めたのは今から20年前とはいえ、第一次、第二次小泉内閣時であり、当然麻生氏も遠からぬ距離で見ていたはずだ。
 
 あまりにもなタイミングでのありえない失言オンパレード。自民党の裏金問題から目をそらせるためにひと肌脱いでいるのではないか、と疑ってしまうほどだ。

 当然ながら発言には批判が相次いだ。

 朝日新聞は1月31日の社説でこれを取り上げ、「今回も党内で問題視する動きは見えない。背景には、麻生氏が多数の国会議員を従える麻生派トップとして、政権運営に強い影響力を持ってきた派閥政治の構造がある」と自民党の体質を批判。

 クーリエ・ジャポンでは2月1日の配信記事で「麻生氏の侮蔑発言に海外メディアも驚愕」とタイトルを打ち、英紙『ガーディアン』やインドのメディア『シー・ザ・ピープル』が麻生氏の失言を批判的に取り上げたことを伝えた。またTBSニュースでは、英紙『ガーディアン』のこの記事は同ニュースサイトで「最も読まれた記事」になったと伝えている。

 昼のワイドショー『ひるおび』でも、出演したコメンテーターらが口々に「今の時代では……」と苦言。https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202401300000397.html

被害者である上川氏にも苦言
時代の空気が読めていない人々

 どこをどう見ても擁護できない状況なのだが、それでもやはり自民党内での麻生氏の地位は盤石なのだと感じさせられたのは、上川氏本人のこれを受けての言葉である。

 1月30日に行われた定例の大臣会見で記者から問われ、「様々な意見があることは承知しているが、どのような声もありがたく受け止めている」と答えたと言うのである。動画を見ると、いつものように表情を変えず、淡々とした語り口である。

 自民党内でどのように女性がわきまえさせられているのかを、これほど如実に表した受け止め方もない。