被災地の介護の問題は
決して人ごとではない
職員の雇用の問題は、地域における老健施設の存続に直結する。もし、この地域から高齢者福祉施設が2種類とも消えてしまった場合、これから年齢を重ねていく地域住民だけでなく職員の人生にも大きな影響を及ぼす。
だからこそ、インフラが復旧した暁には、避難した要介護者たちを珠洲や輪島へ戻し、以前の介護体制を再建するプランを早急に作らねばならない。そうしなければ、珠洲市や輪島市の地域コミュニティーは消滅するのではないかという懸念さえ生じる。
被災しなかった読者の中には、内心で「確かに珠洲市や輪島市はかわいそうだけれど、どうしても自分ごととは思えない」という感想が湧いた人がいるかもしれない。しかし、「三つの問題点」は本当に両地域だけに当てはまる特殊な問題であろうか。答えは否である。
これからも少子高齢化社会は進展する。そして、来るべき南海トラフ地震では、大規模かつ広範囲でインフラが途絶する可能性が指摘されている。被災者数は6000万人を超えるといわれ、能登半島地震の数百倍の規模となる。
今回ギリギリで行われた「高齢者の被災地域外への搬出」というオペレーションを、南海トラフ地震でも再現できるかといえば、あまりに多くのハードルがある。それどころか、もっと悲惨な状況に置かれるかもしれないという懸念が筆者にはある。
あらゆるセクターや人々が、珠洲市と輪島市の問題を「わがこと」として考えねばならない。そして、被災地域外へ搬出された高齢者を守る方策を考えねばならない。そうしなければ、私たちの未来は閉ざされてしまうだろう。