ドローンを遠くまで飛ばせない、
墜落する危険もある日本の規制

 国内外でドローンの研究や開発に携わるハッカーの「量産型カスタム氏」は日本でドローンが活躍できない理由を指摘する。

「日本のデジタル分野、特に無人機(ドローン)の災害対策の不備が、被災地で明らかになっています。問題点はずっと指摘されてきたのに放置されたままであり、ウクライナ戦争を通じてドローンの有効性が認識されたにもかかわらず、日本ではドローンを業務用に限定してしまいました。関連する企業や団体に対して、すでに多額の補助金をばらまいたために、後戻りできない状況です。

 行政が行うべきは、ドローンビジネスへの補助金ではなく、ドローンが活躍できるようにする環境整備であり、具体的には電波などの規制緩和です」

限定的にドローン活用を認めるも
パフォーマンスの域を出ない

 原則飛行禁止となったものの、被災地のドローン活用は自治体や自衛隊の要請などに限り限定的に認められた。

 報道で確認したところ、ドローン関連の企業、大学教授などで作る「日本UAS産業振興協議会(JUIDA)」が、1月8日に〈700人以上が孤立状態になっている輪島市鵠巣地区に向けて市内の中心部から薬を配送しました。ドローンには、地区内の避難所で生活している住民3人の持病の薬が入った箱が収納され、3キロほど離れた避難所がある小学校の校庭まで約10分かけて飛行し、住民のもとに薬を送り届けました〉(NHKニュース、1月9日)という。

 何か美談のような描かれ方だが、同時期に被災地入りしていた量産型カスタム氏に見解を求めた。

「ニュース映像を見ると、薬品を配送するために使用されるドローンを運用する際、発着地点ごとに人員が配置されていることが分かります。もし、人がその場所に行けるならば、わざわざドローンで薬を送る必要はないのではないかとの疑問が生じています。

 これらのドローンは、SIMカードを使用して4G LTEの携帯電波により通信しながら飛行しています。地震で携帯基地局が破壊された被災地では緊急用の携帯基地局(車両)が設置されていますが、回線は不安定で、ドローンの運用で、場所によっては通信速度がさらに低下することも考えられます。このような状況を見ると、ドローンの使用が実際の救援活動よりもメディア向けのパフォーマンスをしているような気がしてなりません」

 こうした効果に疑問符がつくドローン運用の「実績」を積み上げ、メディアに取り上げてもらうために、被災地は都合よく利用されてしまっている可能性が高い。災害時にはケータイ会社の脆弱な基地局に頼ることなく、積極的な規制緩和によって、ドローンに使える電波周波数帯や通信方法を用意しておくべきだった。実際、先述のJUIDAはドローン運用の円滑な実現のための電波法などの規制改革にはダンマリだ。業界団体としてやるべき仕事をしていない。