「光半導体」がデジタル化と省エネの切り札

 生成AIの登場に伴い、世界全体でデジタル化が一段と加速している。今後、あらゆる分野でAIが用いられるようになる。主要国や企業は、データセンターを増やしてAIの深層学習を促進する体制づくりが求められている。

 現在、データセンターで用いられるGPUやメモリーチップなどは、電子(電気)を用いてデータの演算や転送を行う。回路の線幅や半導体の精度向上などで、より多くの電力が必要になった。また、ロジック半導体の回路線幅の微細化は限界に近いとの指摘も多い。

 NTTはそうした課題を克服するため、光半導体の研究開発を強化した。光の速度は、電子を上回る。NTTはその特性を活用し、消費電力性能の向上など、より効率的なデータセンターの構築を目指している。

 2030年、世界全体で、データセンターの電力消費量は2600テラワット/時に達するとの見方もある。実に2018年の14倍だ。米オープンAIのサム・アルトマンCEOも、電力問題の克服に強い関心を持っている。同氏は、核融合発電関連の新興企業に投資したことを明らかにした。

 一方、短期間で主要国が電力の供給体制を拡大することは難しい。再生可能エネルギーの活用、サーバーの冷却など課題も多い。欧州では、アイルランドでデータセンターが急増し、政府は電力ひっ迫を避けるため、建設を規制せざるを得なくなった。

 データセンターの消費電力性能の向上は、生成AIの性能向上に大きく影響する。電力問題の解消は、AI性能向上、それによる中長期的な経済成長、さらに社会の安定にも影響する。その切り札の一つとなるのが、NTTが推進する光半導体である。