国際規格実現に主体的な役割を果たせるか

 今般発表された政府からの補助をきっかけに、NTTが国際的なコンソーシアム(企業連合)の形成を目指す可能性は高い。期待したいのは、光半導体の国際規格実現に主体的な役割を果たすことだ。

 戦略物資としての半導体の重要性が高まる中、次世代の超高速通信を決定づける光半導体は、世界の経済・安全保障体制により大きな影響を与えるはずだ。主要先進国を中心に、通信規格の統一や、製造技術の第三国への流出阻止など、厳格なルールを策定することがいっそう重要となっている。

 そのため、光半導体を実用化し量産技術を確立できる企業が本拠点を置く国は、国際世論・世界経済の運営に主導的な影響を与えるだろう。産業、経済、安全保障などあらゆる分野で光半導体は大きな可能性を秘める。

 NTTは法律の制約があることから、世界規模で研究開発を進めることが難しかったとの指摘は多い。しかし、状況は変わりつつある。NTTに期待したいのは、スピードと規模感でIOWNプロジェクトを進めることだ。

 研究開発の成果を守りつつ、よりオープンな姿勢で海外企業の参画を呼び込む。それにより賛同企業を増やす。それは、わが国の関連産業の需要獲得につながり、先端分野にかかわる企業を活性化させるはずだ。

 ただし、ライバルも多い。米国ではGAFAMなどのIT先端企業と、光通信技術などの開発を行うスタートアップ企業の連携強化が起きている。中国は、武漢光電国家研究センターなど政府主導で光電融合に関する研究開発、先端技術の実用化を目指している。

 光半導体に関する製造技術の実装は、NTTが世界規模で新しい市場をつくり、優位に付加価値を獲得する重要な機会になる可能性が高い。NTT、関連企業および政府が一貫した姿勢で先端分野の研究開発を進め、主要国に先駆けて実用化することができるか。それは、中長期的なわが国経済の回復にも大きく影響するはずだ。