“iモード失敗”の教訓を生かすNTT

 光半導体の実用化を目指すNTTは、早い段階から他社との連携を意識してきた。複数社で研究開発を進めることは、リスク分散に有効だ。手始めに、日本電気(NEC)、富士通と連携を強化した(なお、これらの企業は「電電ファミリー」と呼ばれた)。

 成果を実用化するため、製造技術の強化も必要だ。光半導体の開発には、キオクシア(旧東芝メモリ)、基盤に形成したチップの切り出しや配線を行う新光電気工業、光ケーブル大手の古河電気工業も参画する。

 海外企業との連携も強化している。19年に米インテルやソニーグループとIOWN関連の研究開発を強化すると発表。22年には韓国のSKテレコム(SKグループの移動通信事業会社)とも業務提携を交わした。

 国内外の企業との連携を強化し、自社の技術に賛同者を増やす。こうした発想でNTTが事業運営体制を強化するのは珍しい。この背景には、iモードの世界的な普及を実現できなかった大いなる反省があるだろう。

 1999年2月に始まったNTTのiモードは、世界初のモバイル・インターネットサービスだった。iモードによってNTTグループが世界トップクラスのIT先端企業になる――。こう予想する経済の専門家も一部にいた。

 しかし、現実の展開は大きく異なるものだった。当時のNTTグループにとって、1億人超の人口規模を持つ国内市場で、シェアを維持する考えが強かっただろう。旧ドコモの海外買収戦略の失敗、リーマンショックの発生、デジタル化の遅れによるGAFAMとの格差が拡大し、iモードは“日本のガラパゴス化”の典型例と化した。こうした教訓があるからこそ、光半導体プロジェクトの初期段階からNTTは内外企業との連携を模索している。