生活していくうえで、仕事はとても重要だ。仕事は、食べるために必要なお金や、社会の一員として役割を果たしているというやりがいをもたらす。自分の社会的な価値を評価する基準にもなる。仕事を「労働」と「遊び」の2つに分けてみよう。「労働」はわたしたちの時間や努力によってお金や報酬をもらうこと。

「遊び」は、文字通り遊ぶこと。このように単語の定義ははっきり異なるけれど、実際のところ、労働と遊びは混ざり合っている。だから、わたしたちは労働をしながら遊びから得られる楽しさを期待し、遊びながら労働から得られる報酬を望むのだ。ところが、二次的に得るべきもの(労働をしているときに感じる遊びのような楽しさ)のほうに期待しすぎてしまうと、心のバランスが崩れてしまう。

 わたしが描く絵は、2つに分けられる。依頼されて描く絵と、自分が好きで描く絵。前者は「労働」で、後者は「遊び」だ。描くことは、労働をするときは「手段」であり、遊ぶときは「目的」だといえる。お金を得るために描く絵は、つらくて途中でやめたくなることもある。締め切りぎりぎりまで、ずるずると後回しにしてしまう。自分の時間と努力でお金をもらうために精神的に追い込まれ、楽しさを味わえないときもある。しかし、好きで描く絵は、描くこと自体が目的で、それ自体に価値がある。だから、時間と努力、場合によってはお金を投じても描き続けたいと思うなら、たとえ簡単ではなくても、むしろゲームをクリアするように、楽しんで取りくむことができるのだ。

 わたしは絵を描きながら、労働と遊びが共存する生活を送っている。2つのバランスは完璧ではない。でも、労働のほうが多くなったり、遊びのほうが多くなったりすればそれなりに、うまくバランスを取ろうとしている。「趣味は仕事(職業)にしないほうがいい」という言葉がある。労働よりも遊びを選びながら報酬も求めて苦しんでいたころ、その言葉を聞いてとても悲しい気持ちになった。生活のための仕事と好きなことは一致していると信じていたから。でも、今ではその言葉に共感できる。

「ああ、もっと早くこの言葉の意味を理解するべきだったのに!」と後悔するほど。

 悩みには、3つの特徴がある。

1.悩みは、まだ実行していないことにたいする心配と期待から生まれる
2.悩みは、選択したことの結果(得失)がはっきりしないために起きる
3.悩みは、「善か悪か」「白か黒か」のように二元論的な基準で人生を捉える、柔軟性を欠いた視点によってもたらされる