「自警団」は暴走する。だから国が取り締まるべき

 関東大震災で悲劇の舞台装置となったことからもわかるように「自警団」が危ないのは、「外国人ヘイト」につながることだけでなく、「オレたちのルール」で人を裁くことにある。震災当時の資料を見ると、「朝鮮人はバレないように帽子を被るはずなので、お前のように帽子を被る奴は怪しい」と検問所で詰問されて、確証のないまま殺された人もいる。

 こういう「自警団の暴走」を防いで、善良な外国人の安全を守るためにも、国がしっかりとした方針を定めて、不法行為をする外国人を取り締まったり、難民申請中の人たちへの処遇もしっかり定めたりすべきだ。国外退去させられるわけでもなく、在留を認められるわけでもないという「宙ぶらりん」だから、正規の仕事もできず、外国人コミュニティの中で違法な仕事に従事せざるを得ないという外国人もたくさんいるのだ。

「不逞鮮人」を取り締まることができず、結果として日本社会に「朝鮮人に対する恐怖」を広めてしまったように、一部の不法行為をする外国人をしっかりと取り締まることができないと、「外国人はすべて怪しい」という偏ったものの見方を広めてしまう。

 そういう「偏った正義」にもっとも弱いのが、善良な一般市民だ。

 今、SNSで相手を自殺に追い込むまで誹謗中傷するような人が「自分は社会のために正しいことをしている」と思い込んでいるように、震災時に朝鮮人を虐殺した自警団の多くは「自分は日本のために正しいことをした」と胸を張った、と記録にある。

 このような「市民による正義の暴走」を防ぐには、先回りをして国家が「正義」を示すしかない。国が外国人への取り締まりを強化する、と聞くと脊髄反射で「外国人ヘイトだ!」「差別だ!」と批判をする人が多いが、外国人への恐怖や偏見を軽減することで、「善良な外国人」の人権や安全を守ることができるというメリットもある。

 外国人だろうが日本人だろうが、不法行為は厳しく取り締まるということこそが、「外国人との共生社会」になるための第一歩なのではないか。

(ノンフィクションライター 窪田順生)

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