具体的な問題があるわけではないけれどなぜだかモヤモヤする職場になっていないだろうか。そんな悩みにおすすめなのが、組織開発というアプローチだ。『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』(中村和彦監修・解説、早瀬信、高橋妙子、瀬山暁夫著)では、組織開発のはじめ方を成功事例とともに紹介している。本記事では、組織開発的な観点から職場にありがちな悩みの改善策を著者に聞いてみた。
「成果目標」だけでなく、「成長目標」を組み込んだキャリア支援へ
今の時代、若手社員の転職は珍しくはありません。エース級が一人辞めると後を追うように若手社員の離脱が続くケースもしばしばです。
若手社員にとっては、同世代の誰かが辞めると「アイツはキャリアアップするんだ…」と焦りを感じ、そこから転職ラッシュがはじまるのです。
退職が連鎖してしまうことは、職場にとって大ダメージです。では、職場の士気を下げないためにはどうしたらいいのでしょうか。
マネジャーの方々には、可能な範囲でよいので職場内でのキャリア支援を行うことをお勧めします。
具体的には、目標設定に「成果目標」だけでなく、「成長目標」を取り入れてみてください。
「成果目標」とは、売り上げや粗利などの数字の目標。これを追うだけでなく、数字を達成するために一人ひとりが身につけるとよいスキルを「成長目標」として掲げるのです。
「この数字を達成するためには、こういうスキルを身につけた方がいいよ」と若手社員に語りかける。ちょっと関係ができているなら「この職場でキャリアアップにつながる仕事はどんなもの?」と問いかけてもよいでしょう。
それが「まだチャレンジすることがあるから頑張れるな」と若手が考え直すきっかけになっていきます。
若手社員は「ここにいてもチャレンジできないな」と思った瞬間に飛び出したくなるものです。
この心理を受け止めて「成果目標」と「成長目標」をマネジメントの両輪にするのです。
加えてもう一つ。今の時代、チームを率いるマネジャーは、大前提として「人は入れ替わるもの」と自覚する必要もあるでしょう。
それぞれの職場にはそれぞれの職務があり、それを経験して社員は成長します。この成長機会を飛び超えた優秀な社員がそこから出ていこうと思うのは、ある意味自然なことかもしれません。
そんな職場像をもちながら、人を成長させるプロセスをマネジメントしていけば、エースが辞めても職場の士気は低下しないはずです。
退職者を「裏切り者」でもなく「うまいことやったヤツ」でもなく、「卒業生」として送り出せる組織は健全なのです。
(取材・文 間杉俊彦)