具体的な問題があるわけではないけれどなぜだかモヤモヤする職場になっていないだろうか。そんな悩みにおすすめなのが、組織開発というアプローチだ。​『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』(中村和彦監修・解説、早瀬信、高橋妙子、瀬山暁夫著)では、組織開発のはじめ方を成功事例とともに紹介している。本記事では、組織開発的な観点から職場にありがちな悩みの改善策を著者に聞いてみた。

中堅社員が「仕事に飽きた」と言い残し転職。その対策は?仕事への「飽き」は思った以上に深刻だ(Photo: Adobe Stock)

守りと攻め、「両利きの経営」が必要

 大企業でやりがいのある仕事をしていたはずの優秀な人が突然退職。こんな出来事は、もしかしたら仕事への「飽き」が原因かもしれません。

 変化の激しい時代と言われますが、自分の働き方が劇的に変わったと実感している人は果たしてどのくらいいるのでしょうか。

 仕事に飽きるのは、イノベーションを起こすためのチャレンジが職場にないのが理由です。

 また、すべての人にイノベーションを期待するのではなく、安定した環境で仕事を回すのが得意な人と、新しいビジネスに打って出るのが得意な人の使い分けをする必要もあります。

 つまり、守りと攻めの「両利きの経営」が重要なのです。

 イノベーティブなプロジェクトと、量産型のプロジェクトの両方走らせておくことで企業を維持することができるのです。

 例えば、新しいビジネスに打って出るのが得意な人に向けた制度として、社内で新規事業を立ち上げたい人が集まる「社内ベンチャー部門」を作る会社もあります。

 Googleでは、「エンジニアが勤務時間の20%を自分の業務以外の好きなプロジェクトに使える」というルールが有名です。

「遊び」から付加価値の高いプロダクトが生まれる、という考え方です。

 このように、安定的な仕事からの「抜け道」を制度的に設けるのは一つのやり方でしょう。

イノベーション人材は猛獣である

 仕事に新鮮味を求めるイノベーション人材は猛獣に例えることができるかもしれません。

 ライオンやトラは強いけれど、普段はけっこう神経質で、安定した状態だと死んだようになってしまう。

 能力をフルに発揮してもらうためには、猛獣使いが必要です。

 イノベーション人材を飽きさせないためには、猛獣使いたるマネジャーのマネジメント力が問われます。

 その第一歩は、「その人のWILL(やりたいこと)」を常日頃の対話を通して理解することです。仕事ですからWILLにかなうことだけをやってもらうわけにはいきません。しかし、それを共有することで、チャンスが出てきたときに後押しすることもできるでしょう。

 最後に、イノベーションというのは製品やサービスのアウトプットだけではない、ということも付け加えておきたいと思います。

 例えば、業務効率化やコストダウンなどは業務プロセスのイノベーションとも言えます。

 業務プロセスの変革も含めて上手に目標設定し、評価されるということにつなげられるとイノベーション人材がやる気を出して活躍する場が増えていくのではないでしょうか。

(取材・文 間杉俊彦)