電話恐怖症が
増加傾向の背景

 近年、電話恐怖症の人は増加傾向にあるという。

「要因のひとつは、やはり携帯電話が普及し、休日や夜間などの出勤時以外でも仕事関係の連絡がとれてしまう点です。とくにスマートフォンが普及した2010年代からはより気軽に連絡をとりやすくなり、コロナ禍ではリモートワークの推進により電話のやりとりが増えた側面もあります。結果、『いつでもどこでも電話に応じること』が社会人に求められる風潮も生まれ、もともと電話への苦手意識のある人には、さらに不安をあおる要素になりました」

 ほかにも、LINEなど文字だけのツールになじんだ若者世代が、電話でのコミュニケーションに慣れていないために余計に恐怖感を抱きやすいケースも生まれているそうだ。

「自分の感情や考えを抑圧されて育った環境もまた、不安障害が増える一因です。たとえば、幼少期から『これはしてはいけない』『なんでそんなふうにするの!』と、行動のひとつひとつを親から注意されて育つと、自然と『ありのままの自分でいちゃいけないのだ』と精神に刷り込まれていきます。本来なら、親の指示に背いたって、その選択をした自分に対してちゃんと責任をとれれば問題ないんですけどね。ただ、この『自分はダメなんだ』という感情の積み重ねは、次第に人格形成にも影響を及ぼします。電話恐怖症もまた、相手から怒鳴られた経験と同時に、『自分はダメなんだ』という刷り込みを植え付けられることで、症状が悪化していきます」