ミッションは大事に使うから意味がある

青木 「フィットする暮らし、つくろう。」という言葉は、コンサルタントやコピーライターに依頼して丁寧につくったわけではないんです。もともとやろうと思っていた不動産事業のタグライン「フィットする暮らし、探そう。」から適当につくったんですよ。でもこれを大事に使っていると、ある種の「霊性」みたいなものが宿って、言葉が力を持つようになってきた。

佐宗 その点が「額縁に理念を入れているだけの企業」との違いだと思いますね。

青木 お金をかけて立派な金の仏像を建立しても、誰もそれを拝んでいなければ意味がないですからね。素人がつくった木彫りの仏像でも、村のみんなで何十年も大切にし続けていれば、村で中心的な役割を果たすようになる。そのうち「仏像のための行事や祭をやろう」という話になったり。そういう時間の積み重ねから、現実的な力が生まれてくるんだと思いますね。

また、時間の経過とともに組織や環境が変化していくと、今までの解釈では間に合わなくなるタイミングがやってきます。「これまでの意味でこの言葉を解釈すると、それって本当に『フィットする暮らし』につながるんだっけ?」ということが出てくる。そういうときには、丁寧に解釈を更新したり言葉を磨き直したりする、ある種のメンテナンス作業が必要になってくると思います。

佐宗 クラシコムも理念を少しずつ変化させていますよね。次回は、理念体系の進化についてお話をお聞きしたいです。

(次に続く)