米・アリゾナ工場で生じる文化摩擦
米国人はTSMCの勤務体系が苦手!?
コロナ禍の真っ最中だった2020年5月、TSMCは米アリゾナ州への進出を発表し、半導体工場はそれからわずか2年半で完成した。22年12月、新工場のオープニングセレモニーでバイデン大統領は「米国の製造業が復活した。米国は、今後数年間で世界経済のリーダー的地位に昇格するだろう」と述べた。
しかし、TSMCは23年10月、アリゾナ第1工場での回路線幅4ナノメートルの半導体製造の開始を25年に延期すると発表。さらに今年1月には、アリゾナ第2工場の操業開始も予定していた26年から遅れ、27年もしくは28年に延期されると発表した。
その大きな理由は労使関係にあるといわれている。
米国ではTSMCの米国人技術者が、仕事量や週末の勤務、ライフスタイルとの両立の難しさなどについて不満を漏らしていると報じられていた。昨年6月、台湾メディアは、TSMC董事長(会長)のマーク・リュウ(劉徳音)氏の「TSMCの核心となる価値観は順守すべきで、シフト勤務ができないなら、この産業には参加できない」とする苦言を報じた。
台湾メディアは「半導体生産にアジア人が必要であることは事実が証明している」「米国人はこの作業モデルに慣れていない」「米国がTSMCに現地での半導体生産を望むのは不可能だ」などの声を報じている。