半導体ファウンドリー世界最大手、台湾TSMCの熊本工場が完成し、2月24日に開所式が行われた。これに先立って第2工場の建設も発表していて、政府は総額1兆2000億円余りを支援する予定だ。今のところ日本は米独を上回るスピードでTSMCに対する支援策を打っている。期待したいのが、TSMCと日本のラピダスが切磋琢磨し世界最先端を競う展開だ。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
TSMCとラピダスが世界最先端を競う展開
わが国で世界トップレベルの半導体製造を目指す動きが高まっている。2月6日、世界最大の半導体受託製造企業(ファウンドリー)である、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本第2工場の建設を発表した。同プロジェクトには、ソニー、デンソー、トヨタも出資する。2027年末までに、回路線幅6ナノメートル(ナノメートルは10億分の1メートル)の先端ロジック半導体を量産予定だ。
TSMCは、米アリゾナ州、独ドレスデンなどでも先端チップや車載用半導体工場の建設計画を発表した。ただ、アリゾナ第1、第2工場建設は計画より遅れている。ドイツの財政引き締めなどで、ドレスデン工場建設が計画通り進むか不透明との見方もある。
それに対して、わが国は米独を上回るスピードで支援策を実行する予定だ。わが国における半導体製造装置・半導体関連部材サプライヤーの集積も、TSMCの熊本第2工場のプロジェクトを後押しした。リスク分散のため台湾からの半導体製造拠点の地殻変動が加速する中、わが国は米独に一歩リードしたといえるだろう。
TSMCは、さらに最先端の工場建設も検討しているとの見方もある。これに伴い、国内の製造装置メーカーらは、より迅速に製造技術を高める必要性に迫られている。そうした動向は、北海道で次世代のチップ開発・製造を計画するラピダスにも重要な影響を与えるはずだ。
日本の製造拠点でTSMCとラピダスが世界最先端を競う展開は、わが国経済にとって非常にポジティブな道標となるだろう。もちろん楽観はできないが、半導体産業が復活を遂げ、再び世界トップを目指す展開も期待できるようになってきた。