直木賞作家・今村翔吾初のビジネス書『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)では、教養という視点から歴史小説について語っている。小学5年生で歴史小説と出会い、ひたすら歴史小説を読み込む青春時代を送ってきた著者は、20代までダンス・インストラクターとして活動。30歳のときに一念発起して、埋蔵文化財の発掘調査員をしながら歴史小説家を目指したという異色の作家が、“歴史小説マニア”の視点から、歴史小説という文芸ジャンルについて掘り下げるだけでなく、小説から得られる教養の中身やおすすめの作品まで、さまざまな角度から縦横無尽に語り尽くす。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
歴史小説を読むと
語彙が増える
歴史小説を日々のインプット・アウトプットに生かしていく方法について考えていきましょう。
歴史小説で使われているセリフは、当時の人が話していた言葉の通りではありません。作家は当時の会話の雰囲気や語彙をできるだけ残しつつ、会話を構成しています。
ですから、歴史小説のセリフは、現代における最上級の丁寧言葉に近いといえます。少し真似をすれば、美しい日本語を話せるようになるということです。
とにかく文章が
上手い作家
ちなみに私が「美しい日本語で書かれている歴史小説」に挙げたいのは、『溟い海』(藤沢周平 著)、『樅ノ木は残った』(山本周五郎 著)、『敦煌』(井上靖 著)といった作品です。
この3人はとにかく文章が上手いです。作家の能力をレーダーチャートに表したなら、「文章力」のところは突出するのではないかと思います。
また、語彙を増やす上で歴史小説を読むことは、打ってつけの方法です。何しろプロの私でさえ、いまだに「この言葉、どういう意味?」という言葉を目にする機会がたくさんあります。
知らない漢字に
慣れていく
特に昔の作家の作品を読んでいると、「この人ら、よう言葉知ってはるわ~」と感心することもしばしばです。
知らない漢字を目にすると、最初はストレスを感じます。しかし、心配しなくても大丈夫です。
読書量が増えていけば、漢字のつくりや前後の文脈からおおよその意味は推測できるようになります。
知らない漢字を
確認する習慣
また、わからない言葉をいちいち調べないでも読み進めることは可能です。ただし、調べるのが苦にならない人は、知らない漢字を確認してみてください。
漢和辞典で調べるのもいいですし、今は手書きで漢字を検索できるスマホアプリもあります。
知らない漢字でも、何回か目にしているうちに脳内に定着し、自分が文章を書くときに使えるようになってきます。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。