ベニシダレザクラソメイヨシノの後、京の春空を彩るのはベニシダレザクラ

ベニシダレザクラの名所を訪ね歩く 

 平安神宮に続いては、ベニシダレザクラの名所から名所へ歩いて移動する“紅しだれセット”をご紹介します。

 まずは、京都に17ある世界遺産の一つで、地下鉄東西線「二条城前」駅すぐというアクセスの良さも魅力の二条城へ。徳川家康が、江戸から上洛する将軍の居城とするため1603(慶長8)年に築城。その264年後、15代将軍徳川慶喜により大政奉還の意思が表された歴史の舞台です。

 前回、ソメイヨシノの開花を告げる標本木が二条城にあることをお伝えしました。二条城は、早咲きから遅咲きまで約50種300本もの桜が咲き継ぐ桜名所です。ベニシダレザクラなら本丸の西側と本丸庭園の北東に広がる清流園が見逃せません。恒例の「二条城桜まつり」は4月7日まで。茶席や京みやげの販売ブースなども設けられ、春を待ちわびた人々でにぎわいます。

 二条城とセットで訪れたいのは、東大手門から北東方面へ20分ほどの京都府庁旧本館(国の重要文化財)。1904(明治37)年から71(昭和46)年まで、70年近くにわたって京都府政の中枢だった建物です。幕末の1862(文久2)年、幕府から京都の治安を守る京都守護職に任命された会津藩主の松平容保(かたもり)が兵を率いて上洛し、上屋敷を築いたのがこの界隈です。

 旧本館の建物に囲まれた中庭には、京都の「桜守」として知られる16代佐野藤右衛門が植えたシンボルとなるシダレザクラ(円山公園の「祇園しだれ桜」の孫桜)をはじめ、6種7本の桜の木があります。そのうち1本は「容保桜(かたもりざくら)」(16代佐野藤右衛門命名)。オオシマザクラなどの花の要素を併せ持つヤマザクラの変異種で、一般的なヤマザクラより大輪の花を咲かせるのが特徴です。

 中庭をそぞろ歩きながら桜花を仰ぎ見るのもいいですが、アーチ状の柱の間から眺めてみたり、旧本館内部の階段上の大きな窓から、白い窓枠が切り取る一幅の絵のような桜景色を眺めてみたりと、さまざまな楽しみ方ができます。

 2023年夏には、旧本館内の人事委員会室だったという2部屋に、京都の老舗「前田珈琲」の新店「salon de 1904」がオープン。桜を眺めた後に香り高い珈琲やここだけの限定メニューをいただきましょう。

 もう一つの“しだれ桜セット”は、地下鉄烏丸線「北大路」駅から東へ徒歩8分ほどの賀茂川沿い、ヤエベニシダレザクラのプロムナード「半木の道」が東岸の800mにわたって続いています。うららかな春の日差しを浴びながら、世界遺産・上賀茂神社のシンボル桜「斎王桜(さいおうざくら)」まで30分強のリバーサイド桜散歩はいかがでしょうか。

上賀茂神社賀茂川を北上して、川沿いの桜を愛でるのも一興 Photo:PIXTA