信越化学、三井化学、富士フイルム、京セラ…
新たな局面を迎える大手企業

 信越化学は群馬県伊勢崎市で新工場を建設し、主に最先端の半導体に必要な露光関連の部材生産能力を強化する。第1期完工段階の計画では、2026年までの工場完成を目指し、約830億円を投じる。新工場は米国などへの輸出拠点や、中長期的な新製品開発のための研究開発拠点の役割も担うようだ。

 長い間、信越化学は国内と台湾などで生産能力を拡張し、世界の半導体市況の変化に対応してきた。3~4年周期の「シリコンサイクル」に対応しつつ収益性を高めるため、新工場の建設には慎重だった。

 しかし、最近の事業環境は加速度的に変化した。特に、生成AIの急成長により世界全体でAIチップの需要は急増している。信越化学は、従来の事業戦略で需要の伸びに対応することは難しくなったと判断したようだ。

 また、米国の対中半導体関連規制強化や、わが国の半導体関連企業への支援政策強化もあり、国内に新工場を建設する重要性が上昇している。群馬県や伊勢崎市の迅速な協力・支援もあり、今回、信越化学は迅速に新しい国内工場の建設を決定したという。

信越化学56年ぶり国内工場建設とマイクロソフト4400億円投資に共通する狙いとはTSMCが熊本県に設立した新工場「JASM」 Photo:KOROKICHIKUN / PIXTA

 設備投資を積み増す国内の企業は増えている。三井化学は山口県で、次世代の半導体露光工程で使われる薄膜の生産能力を強化する。TSMCの工場建設に合わせ、熊本県では富士フイルムが「CPMスラリー」の国内拠点を新設、生産を開始した。京セラは鹿児島県で、半導体製造装置向けのセラミック製品の供給体制を強化する。

 北海道千歳市のラピダス、熊本県菊陽町のTSMC工場建設を呼び水に、周辺地域に、半導体の製造装置、高純度の部材メーカーが拠点を増やし、サービスや生産体制を強化している。これに伴い、地方の一部で、経済活性化のモメンタムが高まり始めた。