信越化学工業 直江津工場信越化学工業 直江津工場 Photo:PIXTA

世界の化学メーカーの時価総額ランキングで第4位(2023年12月末時点)に位置する優良企業、信越化学工業が56年ぶりに国内工場を新設する。また、三井化学や富士フイルム、京セラなど国内で設備投資を積み増す大手企業が増えている。はたまた、米マイクロソフトは約4400億円の対日直接投資を行うと報じられた。これらに共通する狙いとは?(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

信越化学が56年ぶりに国内工場を新設
半導体関連の商機は高い

 このところ、半導体関連工場の新・増設のニュースが世間をにぎわせている。半導体や半導体用のシリコンウエハー(半導体の基板)、フォトレジスト(感光材)、セラミックなどの工場が地方で建設ラッシュの様相を呈しているのだ。それに伴い、一部地域では建設関係者や技術者などが集まり、経済活動が活発になっている。

 信越化学工業は56年ぶりに国内工場を新設する。同社は新工場建設に慎重な姿勢を取ってきたが、戦略物資として半導体の重要性が高まっていること、AIチップの需要が加速度的に増えると期待されることから、踏み切ったのだろう。信越化学の決断は、半導体関連部材のビジネスチャンスが高いことを示している。

 ラピダスは北海道千歳市で、回路線幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートルのAIチップなどを生産する工場を建設中だ。台湾積体電路製造(TSMC)は熊本県菊陽町に第2工場も建設する。生成AIの開発強化などを目指し、国内のデータセンターも増える。

 中長期的に、半導体製造装置や、関連部材メーカーに対する製造技術強化の要請は強まるだろう。それに伴い、地価が相対的に低い地方に、新しい工場や研究開発施設を建設する企業は増えると予想される。先端半導体向けの部材、装置関連分野で、世界的競争力を持つわが国の企業は多い。そうした企業が増えると、今後、地方経済の活性化が進むことが見込めるはずだ。