行動を起こすことは、先延ばしにともなう不快感と罪悪感を消し去る効果を持っている。課題に取り組むことのストレスと不安をやわらげる作用もある。そして、それと同じくらい重要なのは、いったん行動を起こすと、課題をやり遂げるための勢いが生まれることだ。

プライベートに加えて
仕事にも悪影響をおよぼす

 先延ばし癖に対して払う代償は、すぐに現れるとはかぎらない。課題を先延ばしにすればするほど、本当の代償が顕著になる。そして、それはやがて公私にわたって大きな支障をきたす。

 先延ばし癖は、プライベートの4つの分野に悪影響をおよぼす。

 すなわち、(1)人間関係の悪化、(2)経済状態の悪化、(3)健康状態の悪化、(4)機会の損失である。

 ひとつずつ具体的に説明しよう。

(1)人間関係の悪化

 未解決の問題についてパートナーと意見が食い違ったとしよう。そういう問題は真剣に話し合って初めて解決することはわかっているが、それは非常に難しい。かといって、話し合いを先延ばしにすると、気まずくなって心理的距離が生じる。

 間近に迫った懇親会について連絡するのを先延ばしにしたとしよう。だが、そうすることによって、友人たちとの交流を深める機会を逃すことになりかねない。

(2)経済状態の悪化

 クレジットカードの支払いを先延ばしにしたとしよう。支払いが遅れると、遅延損害金が発生するだけでなく、クレジットカードが使えなくなるおそれすらある。

 税金の支払いを先延ばしにしていると、そんなときにかぎって緊急事態が発生して支払いが間に合わなくなり、利息に相当する延滞税を課せられるはめになる。場合によっては税務調査が入るおそれすらある。

(3)健康状態の悪化

 先延ばし癖は健康状態を悪化させるおそれもある。たとえば、体調が悪いと感じたとき、病院に行くのを先延ばしにしたとしよう。運がよければ自然に治るかもしれないが、体調が悪いのは重症だからかもしれず、早期治療を要する可能性がある。その場合、病院に行くのを先延ばしにすると深刻な事態を招きかねない。

 運動するのを先延ばしにしたとしよう。日々の運動習慣を始めるべきだとわかっているが、なかなか実行する気になれない。行動を起こさないまま数カ月が経過し、体力が徐々に衰え、体脂肪が増加し、心臓の具合が悪化する兆しが現れるかもしれない。