人間の行動に対する見え方が変わる
岩瀬 『人生が整うマウンティング大全』に書いてあることを言うと、別にマウント自体は必ずしも悪いことではないですよね。それは誰もがしたがるものだし、人間の本能だから。
となると、する側もされる側も、頭ごなしに否定するのではなく、ひと呼吸置いて「まあ、そういうものだよね」と、受け入れて前へ進んでいってほしいなとも思いますよね。
勝木 そうですね。とはいえ、社会人1年目の頃は、たぶんその段階では受け入れて達観するのは、ちょっと難しいかもしれません。
岩瀬 たしかに、若いうちは割り切りがまだできないし、かみしめて理解するのは簡単じゃないかも…。
でも、この歳になって僕たちが「あ、そうか」って気づいたのですから、若いうちから人間のbehavior(ふるまい)を理解する一つの重要な視点として「マウンティング」というものを把握しておくといいかもしれません。
社会人の早い段階で、人間の行動に対する見え方が変わってきそうですよね。
勝木 その通りで、知っておくに越したことはありません。
それは本当にマウントなのか?
岩瀬 本を読んでいて思ったのは「(言われた本人が)気づいてなければ、マウントではない」ということです。
要は受け止め方次第だなと思って。
僕は古典芸能愛好家なんですけど、古典芸能を愛好していることがマウントだなんて一度も思ったことがなくて。むしろマイナーでオタクなほうだと思われていたくらいでしたから。大学時代もジャズのサークルに入っていて、みんなに奇異な目で見られていました。
30歳ぐらいになると、古典芸能もジャズも「素敵ですね」となるんですけど、若い頃ってジャズ好きって評価の対象にはならないんです。珍しいヤツだから。
先日も大阪で文楽を見ていたんですけど、これもただ好きで見ているだけだし、かっこいいとも思っていない。人からどう思われるかという発想がそもそもなく、自分が好きだからそうしているだけなんです。
こうして考えると、その人にとって「ありたい姿だけれど、なれない」何かを見せられたとき、マウントされたと受け取るのではないかと。
勝木 普通の人たちから見たら、そう見える部分はあるかもしれませんね。
本の中では、普通の人よりもアッパーミドルというか、そういう人たちが意識したくなるマウントネタをたくさん集めました。
岩瀬 だから「意識高い人」と言われる人たちに、この本がウケているのですね。
勝木 私自身、新卒で銀行というある意味一般的な「THE 日本企業」を4年ぐらい経験したからこそ、「マウント」が見えてきた部分はあります。やはり一般の人の感覚や視点みたいなものが、この本の強みというのはありますね。
誤解を恐れずに言えば、メガバンクとゴールドマン・サックスでは見える世界がまた違います。
一般社会から見たらメガバンクもエリートかもしれませんが、さらにその上の人たちを見て感じる憧れや違和感のようなものが、この本で紹介するマウントの正体かもしれません。
岩瀬 なるほど、やはり見え方や捉え方次第なのかもしれませんね。
話をまとめると、入社1年目のみなさんも、配属に限らず普段からさまざまな人たちからマウントを受ける可能性があるということ。そのときに、不快な気持ちになったり凹んだりする前に、次のように対処するといいのではないかと。
<不意のマウントへの対処法>
- まず一呼吸おく(深呼吸して気持ちを落ち着ける。会話の最中だったらすぐに反応しない)
- 自分がマウントされたのかどうか、冷静になって観察する
1.悪気がなく嬉しくて言っただけかも→気にすることはない
2.単なる自慢っぽい→「そうなんですか」と相づちを打つ、あるいはそっと受け流す
3.何らかの悪意を持っての発言なのか
→このケースは稀。もしそうであるなら発言の意図や理由を考える - 人は自然とマウントする生き物だと理解し、受け入れる
- 周囲からどう見られるかを気にしすぎない
勝木 まとめていただきありがとうございます。新入社員に限らず、すべての人に使える方法ですね。あえて付け加えるのであれば、『人生が整うマウンティング大全』を読んで笑い飛ばしていただくのもおすすめです(笑)。
※「マウント」とは何かがわかってきたところで、次は誰もが知っておくべき「マウント」の本質についてお話しします。明日公開予定です。お楽しみに。