頼清徳総統と蕭美琴副総統頼清徳総統と蕭美琴副総統 提供:中華民国(台湾)外交部

5月20日、台湾に新しい総統と副総統が就任した。「野球をイメージした外交」を打ち出す頼清徳(らい・せいとく)総統と、イメージキャラクターは「戦う猫」という蕭美琴(しょう・びきん)副総統の二人だ。どのような人物なのか、詳しく紹介する。(名古屋市立大学大学院人間文化研究科研究員 齋藤幸世)

5月20日、台湾の新しい総統と副総統が就任

 5月20日、台湾の民進党(民主進歩党)新総統に頼清徳氏、新副総統に蕭美琴氏が就任。新体制による新たな台湾がスタートした。同日、台湾の台北市にある台湾総統府では就任式が行われ、二人が就任宣誓をした後、総統府前広場で就任祝賀会が開催された。この舞台で行われた新総統の就任演説で、頼氏は「民主・和平・繁栄が台湾国家路線で、世界とつながる」と語った。

 これまで2016年5月から2期8年続いた蔡英文政権から、頼清徳政権へと交代した。蔡政権で副総統であった頼清徳新総統は、新たな台湾社会の構築を目指している。特に、中国との関係について、就任を目前にし、5月15日に次のように発言していた。

「私は相互尊重、相互利益、尊厳を排除せず、前提条件なしで中国との対話を始める」

 就任式には、世界各国から、ほとんどが国家元首あるいは首相レベルで、約50団体の来賓を迎えたようだ。外交部長(日本の外務大臣に相当)の報告によると、就任式には、日本の国会議員超党派議員30人あまりに加え、故安倍晋三前総理の昭恵夫人も出席したことも明らかになった。日本代表団の人数が過去最高に達したため、日本の地方首長47人を招待することはできなくなったようだ。そして、過去2回の台湾の就任式典に出席していた沖縄県知事は、かつて「台湾有事は、日本有事」という論調に反対したことから、今回は招待されていないという発表もあった。

 新しい台湾のナンバーワン&ナンバーツーの門出は順風満帆……というわけではなかった。就任直前の5月17日、台湾の立法院ではケガ人続出の乱闘騒ぎが起こる中、野党連合によって「ブラックボックス法案*」が強行採決された。この法案には、国民党(中国国民党)が希望する10年計画の高速鉄道や高架、トンネル工事などの交通建設案(新台湾ドル2兆元=日本円で約10兆円の大規模なもの)も含まれているようで、中国による「一帯一路」計画が台湾にも浸透する可能性がありそうだ。

*注:「ブラックボックス法案」は、台湾社会で通称「黒箱法案」と呼ばれている法案で、正式名称は「『藍白』提出による『国会改革法案』」。5月17日の朝、国民党(党カラーが青、つまり「藍」)と台湾民衆党(党カラーが「白」)が共同で作成した法案の新版を指す。国会でも、行政院の公式ホームページを見ても、詳しい内容は公表されていない。
台北市内にある、中華民国総統府台北市内にある、中華民国総統府。新しい総統・副総統の就任式が行われた(筆者撮影)