「野球の熱狂的ファン」頼清徳新総統は、「野球&スポーツ外交」

 頼清徳総統は、元医師で1996年に民進党入りした。1999~2010年に台南市立法委員、2010~2017年に台南市長、2017年より蔡英文政権下の行政院長となり、2020年には副総統に選出された。

 2024年新総統就任祝賀会の総統府前広場舞台では、台湾プロ野球のかつてのエース4人が招かれ国歌斉唱をリードした。熱狂的な野球ファンである頼清徳総統は、2024年台湾総統選のイメージ戦略として、野球をモチーフに「TEAM TAIWAN」として台湾の一致団結を強調していた。

 蕭美琴副総統も野球好きである。「TEAM TAIWAN」のおそろいの緑色のジャンパーは、日本の関西地方で会社を経営している華僑の女性会長の寄付で制作し、今年の民進党の選挙戦に提供したものだ。日本各地の多くの在日華僑方が各地域でグループを組み、今年1月の選挙に繰り出して全力で応援していた。私も、ご厚意でこのジャンパーを頂き、それを着て1月11日に総統府前で開催された選挙キャンペーンに参加した。

1月の選挙戦で使われた、TEAM TAIWANのジャンバー1月の選挙戦で使われた、TEAM TAIWANのジャンバー(筆者の私物を撮影)

 このように野球好きの頼総統は、就任以降も外交戦略の一つとしてスポーツ外交と野球外交を採り入れることになりそうだ。2023年11月に正式に台北市から認可を得た「タイペイドーム(臺北大巨蛋:臺北文化體育園區、臺北巨蛋)」は、台湾初の屋内ドームで、同年12月初旬に初めて正式国際試合「第30回アジア野球選手権大会」が開催された。前日の記念式典には、世界のホームラン王・王貞治氏が始球式に招かれた。そして、今年の3月2~3日には「読売巨人軍90周年記念親善試合」として、読売巨人軍対中信ブラザーズ、読売巨人軍対楽天モンキーズの試合が行われ、日本でも放送された。3月30日にはタイペイドーム初の台湾プロ野球(中華職業棒球大聯盟:CPBL)公式戦、味全ドラゴンズ対楽天モンキーズが開催された。

 頼清徳新総統は、野球に限らずスポーツ全般で国際交流をさらに活発化していこうとしている。台湾の選手が海外遠征するだけでなく、台湾国内での国際大会を増やす狙いもある。台湾は国家としての立場で諸外国と交流するのが困難な中、スポーツや文化レベルでさまざまな国や地域に赴き、スポーツ交流を図るといった方向性も模索している。