書籍や動画、SNSなどで自己啓発やマインドセットに関するものを見ていると、大半のものが「ポジティブシンキング」を推奨している。しかし、なかなかポジティブになれず悩んでいる人も少なくないのではないだろうか。そんな方に向けて「がんばらなくてもいいよ」とやさしいメッセージをくれるのが、SNSで大人気のカウンセラー・Pocheさんの新刊『がんばるのをやめたらうまくいった』だ。人間関係や親子問題、アダルトチルドレン(AC)専門のカウンセラーとして活躍するPocheさんは、ネガティブな思考についてどのように考えているのだろうか。本記事では、本書の内容をもとに紹介する。 (文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

がんばるのをやめたらうまくいったPhoto: Adobe Stock

ネガティブ思考は良くないもの?

 ポジティブか、ネガティブか。

 そう問われて「ポジティブです!」と元気に答える人とは「あまり仲良くなれそうもないな」と感じたことがある人は多い……とまでは言わないが、それなりにいるのではないだろうか。

 そう思う人はほぼ間違いなく、筆者と同じくネガティブ思考の持ち主だと思う。

 筆者の場合、特に仕事においてネガティブ思考が発揮されることが多い。

「このまま進めたらトラブルが起こるのではないか」「ここは再度確認しておいた方が良いのではないか」などと、“失敗するかもしれない”を前提に考える癖がある。心配性なのだ。

 時々、「気にしすぎ」「そこまで考えなくても大丈夫だよ」などと言われて、「私が考えすぎなのだろうか……」と落ち込むこともあった。

 しかし、Pocheさんは「誰かに指摘されたからといって、自分の考えを変える必要はありません」とアドバイスをくれる。

「考えすぎ」と否定する人は、考えるのが苦手な人

 その理由は次のようなものだ。

「考えすぎ」「気にしすぎ」と指摘する人とあなたとでは、気になるポイントが違うだけです。なにについて考え、なにを気にするのかは、あなたの自由です。
あなたには自分の頭で考える力や、いろいろなことを察して相手を気づかうスキルがある、ということです。これは決して悪いことではありません。(P.52)

 そう! ネガティブな人は、先を読む力、さまざまなパターンを考える力があるとも言えるのだ。ネガティブな人たちを励ましてくれる、なんともうれしい言葉ではないか。

 さらにPocheさんはこうも述べる。

「もっと気楽に考えたら」と指摘する人は、考えるのが苦手なことが多いものです。
深く考えることが苦手だから、考えないことを正当化しているだけなのかもしれません。
人は、自分にないものを「脅威」とみなして嫌悪することがあります。(P.52-53)

「考えすぎる」と若干悪く言われがちなネガティブ思考だが、考えるのが苦手な人からすると、「なんでこの人、ここまで考えるのだろう」と訝しく思ってしまうだけなのかもしれない。

 そう捉えると、「別にネガティブだって悪くないじゃないか」と素直に思えてくる。

「ポジティブが大事」という風潮に振り回されないで

 昨今、世の中には「ポジティブに考えよう!」「ポジティブシンキングを身につけよう」といったメッセージに溢れている。 

 もちろん、ポジティブに考えた方が物事がうまく進むケースもたくさんあるだろう。しかし、それと同じくらい、ネガティブだからこそ「気づけること・回避できること」もたくさんあるに違いないのだ。

 だからこそ、Pocheさんは「不安になったときには、ネガティブだからこその強みを思い出してください」と呼びかける。

世間の風潮に合わせたり、誰かのために無理やりポジティブになったりするよりも、今の自分の気持ちを大切にしてあげてくださいね。(P.53)

 いくらポジティブに考えていても、実際にネガティブになるような出来事も起きてしまうのが現実だ。

 ネガティブであることで備わっている「先を考える力」を味方につけて、自分らしく乗り越えていきたいものである。