文章を書くことを仕事にしたことで、大企業の社長や起業家、科学者など、いわゆる社会的に成功した方々にたくさん取材する機会を得てきました。その数は、3000人を超えています。誰もが知る有名な会社の社長も少なくなく、「こんな機会はない」と本来のインタビュー項目になかったこともよく聞かせてもらいました。インタビューで会話が少しこなれてきているところで、こんな質問を投げかけるのです。
「どうして、この会社に入られたのですか?」
数千人、数万人、中には数十万人の従業員を持つ会社の経営者、あるいは企業を渡り歩いて社長になった人となれば、仕事キャリアに成功した人、と言って過言ではないと思います。仕事選び、会社選びに成功した人、とも言えるでしょう。ところが、そんな人たちの「仕事選び、会社選び」は、なんともびっくりするものだったのです。

オンライン就活で気をつけなければいけないことPhoto: Adobe Stock

インターネットで得られる情報には限界がある

  コロナ禍以降は、ちょっと困った事態が起こっていると感じています。オンラインでの就活が当たり前のようになってしまっているからです。

 オンラインでは、残念なことに五感のうち視覚と聴覚しか使えません。相手の雰囲気を感じることができなくなってしまっているのです。これは、面接をする側にとっても、面接を受ける側にとっても厳しい事態だと思います。

 どこからでもオンラインには入れますし、パソコンの周辺で何が行われているのかは、面接官はわからない。中には、パソコンの横に貼り付けた志望動機の文章を読み上げている学生もいると取材で耳にしました。

 また、肩から上の上半身しか見えないので、全体の印象がわからない。肝心な第一印象が直感的に捉えられないというのです。

 オンライン就活は、地方在住など距離のハンデのある人たちにとっては強力な武器になっています。大事にしたいところでもある一方、相性を判断する五感の力をフルに活かせないところがあることは、認識しておくべきでしょう。

 願わくば、できるだけリアルでの機会を持ったほうがいい。また、リアルで自分で判断する機会を作ったほうがいい。感じられる情報量が、まるで違うことに気づくことができると思います。

 ちなみに、面接が上手な人、下手な人についても取材で話を聞いたことがあります。もともとのコミュニケーション能力もあるのですが、実は大きいのは「慣れ」なのです。30代、40代、50代の大人とのコミュニケーションにどのくらい慣れているか、です。

 慣れていないから、うまくしゃべれない。緊張してしまう。どうしていいかわからなくなる。普通に学生生活を送っていたら、親以外の30代以上の人とコミュニケーションを交わせる機会はほとんどないでしょう。

 だから意図的に作るのです。親に紹介してもらうのもいいでしょう。アルバイト先で意欲的に大人と交わるのもいい。ボランティアや大人の集まるコミュニティに加わってみるのもいい。大人とのコミュニケーションに慣れていれば、面接はまるで違うものになります

 もっと言えば、自然に自分の素を出せるようになる、とも言えます。大人といっても、特別な人たちではないのですから。もっと肩の力を抜いて、面接に当たればいいのです。きっと偶然で入社した人たちも、そうしていたのだと思います。

※本記事は『彼らが成功する前に大切にしていたこと 幸運を引き寄せる働き方』上阪 徹(ダイヤモンド社)より、抜粋して構成したものです。