高配当・半導体・生成AI超進化!5年後の業界地図#4

圧倒的勝ち組セクターの総合商社だが、世界的分断による資源高の定着や供給不足で、活躍の場がさらに拡大。インフレや円安も高水準の利益を押し上げる。ただし、中期経営計画を分析すると、積極的な株主還元策が評価される一方で、「いつか来た道リスク」も見え隠れする。特集『高配当・半導体・生成AI超進化!5年後の業界地図』(全19回)の#4では、総合商社の三つのキーワードを解説しつつ、三菱商事や三井物産、伊藤忠商事など7社の戦略を解説。意外なダークホースを含むトップアナリスト3人の注目企業も紹介する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

株価は8年で5倍以上に上昇
年収は30代で2000万円超えも

「業績」「株価」「株主還元」「社員の給料」「就職人気」――。全てにおいて絶好調なのが総合商社7社(三井物産、三菱商事、伊藤忠商事、丸紅、住友商事、豊田通商、双日)だ。2024年3月期は資源バブルの反動があったものの、住友商事を除く6社が期初予想から上振れして着地した。

 株価も16年初から日経平均が2.2倍に上昇したのに対して、総合商社の上位3社(三井物産、三菱商事、伊藤忠商事)は5倍以上に上昇(下図参照)。上場企業の年収ランキングでは上位5社が全て10位以内に入るなど、間違いなく「圧倒的な勝ち組」である。

 とはいえ、気になるのは「今がピークではないのか?」ということだ。実際、過去の総合商社は資源価格次第で利益の変動幅が大きく、業績のピークで株を買うと高値つかみになりやすかった。ただし、この点について今回は異なるとみる専門家が多い。

 東海東京インテリジェンス・ラボの栗原英明シニアアナリストは「総合商社はまだ良くなる」と明言する。なぜならば、バランスシートが改善して、キャッシュフロー・マネジメントが定着。新規投資がしやすくなり、キャッシュが回りやすくなっているからだ。「高度経済成長の終焉後では今が最も良い状態」(栗原氏)だという。

 大和証券の商社・資源担当の永野雅幸シニアアナリストも「今回の世界的なインフレは『脱炭素』『脱ロシア』による供給不足が要因の可能性が高く、資源価格も高止まりしやすい。物不足の時代は『調達力』が重要になるため、グローバルネットワークを持つ総合商社の価値が発揮されやすい」と指摘する。

「物余り」の時代は消費者側が力を持ちやすいが、「物不足」の時代は上流、中流を押さえている総合商社のような企業が優位に立ちやすい。さらに国内は人口の構造変化による人手不足もインフレ要因になっている。

 好事魔多しというが、今後5年間も総合商社は輝きを増していくのか。7社のうち、5年後に業績が伸びるのはどこなのだろうか。

 次ページでは、事業戦略に加えて「成長投資と株主還元の方針」など5年後の業績と株価を占う三つのキーワードを分析。最高水準の年収比較や、5年後の本命企業についても紹介する。意外にも専門家が指摘する商社がはまりかねない「いつか来た道」のリスクも詳述していこう。

図表:総合商社の5年後(サンプル)