「ただの睡眠不足だよ」と言っていた人が入院することになってしまった末路とは?
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「ただの睡眠不足だよ」と言っていた人が入院することになってしまった末路Photo: Adobe Stock

「睡眠不足」はサイン

「睡眠不足は万病のもと」って話、聞いたことありますよね?

 実際、睡眠は心と体にとって、すごく大切な習慣なんです。
 睡眠不足が続くと、糖尿病や認知症のリスクが上がることがわかっていますし、実際に睡眠不足でうつ病になっちゃう人も多いんです。

 それほど大事な睡眠ですが、実は睡眠不足って「危険を示すサイン」の一つとも考えられているのです。

 人間は緊張が続くと「過剰な緊張状態」になってしまいます。
 休日でも仕事のストレスに悩んだり、不安を抱えたままでいると「ずっと緊張が取れない」という悩ましい状態になります。

 そこからだんだん眠れなくなったり、逆に寝つきはいいけど夜中に何度も目が覚めたり、朝早く起きてしまったりして睡眠不足になります。

「でも、ただ眠れないだけでしょ」と思うかもしれませんが、そんな状態が続くと、睡眠で消化されるはずだったその日のストレスや不安が翌日に持ち越されちゃいます

 睡眠は気持ちをリセットしたり、感情をコントロールするのにも重要なんです。

入院してしまった末路

 睡眠を軽視すると大変なことになる例があります。

 あるコンサル会社で働くAさんは、超働き者で有名でした。
 そんなAさんの会社は業績悪化で急に人員が減り、業務量が増えました。

 そこからAさんは仕事を家に持ち帰って休日も返上して働きづめになりました。
 そんな無理をしているうちに、夢の中でも仕事をしているような気持ちになり、「明日が来るのが嫌だな」と感じるようになって、寝つきが悪くなり、寝ている途中で何度も起きるようになりました。

 それでも「ただ眠れないだけ」と働き続けた結果、ある日、上司から業績について軽い指摘を受けたことで「もう限界だ」と感じて仕事に行けなくなりました。

 そこから病院に通うようになり、会社も退職し、何ヵ月もの治療期間を経てようやく社会復帰できるようになったころには、闘病期間が何年にも及ぶようになっていました。

 このように、うつ病や適応障害などの病気の「予兆」として睡眠不足が見られることがあります
「眠れない」「途中で起きちゃう」という状態はじつは危険が迫っている前兆ということがあります。

 そんな問題が続くときは、放置せずにまずは誰かに相談して、悩みを減らすためにメタ的な視点から問題を解決していきましょう。

(本稿は、頭んなか「メンヘラなとき」があります。の著者・精神科医いっちー氏が特別に書き下ろしたものです。)

精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。