狂乱バブル ホテル大戦争#11Photo by Masato Kato

日系ラグジュアリーホテル、パレスホテル東京を展開するパレスホテルの業績は新型コロナウイルス禍による落ち込みからV字回復を遂げた。同社は東京・丸の内に立地するパレスホテル東京に依存してきたが、足元で「一本足打法」からの脱却を図っている。特集『狂乱バブル ホテル大戦争』の#11では、吉原大介社長が「脱・丸の内依存」に向けた成長戦略を語った。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

社長就任直後にコロナ禍で閉館
23年の売上高は19年を上回る

――2020年の社長就任直後に新型コロナウイルスの感染拡大が直撃しました。

 社長に就いたのが20年3月30日だったので、2週間もたたないうちに緊急事態宣言が出て、ホテルを閉めなければいけませんでした。宿泊は全てキャンセルとなり、レストランも閉じました。どうしたものか、と。

 2カ月間閉館したときは、部長以上が皆ホテルに泊まり込んで、そこでコロナ後の戦略を議論していました。合宿ですね。当時はテイクアウトなどにもチャレンジしました。皆で議論していろいろ挑戦したことが、コロナ後の今も、新しいことをやろうというモチベーションにつながっています。今になってプラス思考で振り返ると、将来について考えるいい時間になったと思います。

 コロナ禍の打撃からは、まずレストランが比較的早く回復しました。インバウンド(訪日外国人観光客)需要が消えた中で、日本のお客さまに来ていただきました。手応えを感じてきたところに、22年に入国制限が撤廃されて、インバウンドが戻ってきました。

――23年の連結売上高は355億円となり、コロナ禍前を上回りました。

 20年に大阪に宿泊特化型の新ブランド「Zentis Osaka(ゼンティス大阪)」をオープンしました。また、パレスホテル東京の地下にあるペストリーショップ「スイーツ&デリ」を百貨店に出店するなど外販事業にも力を入れています。今年、東京・代官山にベーカリー「Et Nunc Daikanyama(エトヌンク代官山)」もオープンしました。そうした取り組みもあり売り上げは伸びています。24年の売上高も23年を上回って推移しています。

――足元は極めて好調だということですね。

 そうですね。全体的には好調です。ただし、一喜一憂するのではなく先のことを考えて手を打っていかなければなりません。

 われわれは売り上げや利益に加え、「丸の内比率」を重視しています。東京・丸の内に立地する旗艦店のパレスホテル東京は中核ですが、エリアや事業領域を広げることで丸の内比率を下げ、リスク分散をしていかなければなりません。台湾を代表する老舗ホテル、台北アンバサダーホテルと組んで28年には「アンバサダーパレスホテル台北」を開業します。大阪や台湾にホテルを出すのは、エリアの分散であり、外販事業は事業領域の分散に当たります。

――台湾で進んでいるプロジェクトの進捗は。

次ページでは、吉原社長が「脱・丸の内依存」に向けた台湾や国内でのホテル事業に関する具体的な戦略を明らかにする。また、外資系ホテルにはない同社の強みに加え、価格やインバウンドに対する戦略についても語った。