かといって、自分を向上させてくれない「無駄な」ドーパミン源を楽しむなと言うつもりはない。私だってテレビドラマを観るし、時々美味しいアイスクリームを食べるし、映画を観る時にはポップコーンがあると嬉しい。

 ここで言いたいのは、ドーパミンを理解することで人生は大きく変わるということだ。

効果の時間に差が生じる
2種類のドーパミン

 ではドーパミンは私たちにどういう影響を与えているのか。〈天使のカクテル〉の視点から見ると、モチベーションや勢い、何かを手に入れたいという欲求を生み、満喫させ、長期記憶にも重要な役割を果たす。

 正確に言うとドーパミンを合成するニューロンは4種類あるのだが、ここでは報酬を制御するニューロンと、意志の強さや決定など実行機能を制御するニューロンを取り上げたい。

 スタンフォード大学の神経科学者アンドリュー・D・ヒューバーマン教授がわかりやすい解説をしているのでそれを引用すると、ドーパミンは私たちにもっと探させ、学ばせ、向上させるために、活動の「前」と「間」に増えるが、活動「後」はベースラインより低くなってしまう。このベースラインは人によって違うが、ここでは1~10のレベルで5としておこう。

 そのレベルが上がるような活動、例えばインスタグラムで面白い動画を観たりすると6まで上がる。しかし観終わるとすぐに4.9まで下がり、その人にもっとドーパミンが増えるものを欲しくさせる。

 そこであなたはもう1本動画を観る。それも1本目と同じように面白かったが、観始めた時のレベルが低かったので5.9までしか上がらない。しかも観終わると今度は4.8まで下がってしまう。その調子で動画を観続けてしまい、最後には飽きて、もう面白いと思えなくなる。その頃にはベースラインは4まで下がっていて、動画を観始める前よりも精神状態が悪くなっている。

 ドーパミンには2種類あると言えばわかりやすいかもしれない。名づけてクイック・ドーパミンとスロー・ドーパミン、短い効果しかないドーパミンと効果が長く続くドーパミンだ。

 実際にはそんな名前のドーパミンはないが、わかりやすくたとえるとそうなる。クイック・カロリーとスロー・カロリー[ゆっくり消化吸収される健康的な糖質]のような感じだ。