ChatGPTが登場して以降、いろいろな生成AIが登場して話題となっている。早速使いこなしている人、まだ触ったこともない人と、この新しいツールの活用度合いは人によって様々だ。しかし、これからはAIを使って仕事をすることが当たり前の時代になる。そんな時代でしっかり活躍できる人間になるために、子どもたちはどんな力を身につけておく必要があるだろうか。10年連続で算数オリンピック入賞者を輩出している彦根市発の知る人ぞ知る塾、「りんご塾」。その塾長である田邉亨氏はどのように考えているのだろう。田邉氏の初著書『「算数力」は小3までに育てなさい』の内容をもとに紹介する。(文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

「算数力」は小3までに育てなさいPhoto: Adobe Stock

AI時代に必要な力とは?

 あなたはすでにAIを仕事に活用しているだろうか?

 ChatGPTが登場したのが2022年11月末こと。非常に大きな話題となり、今では仕事に取り入れている人も少なくない。

 気が付くと生成AIの種類もかなり増え、画像や動画なども気軽に作れるようになった。

 うかうかしていると、あっという間に時代に置いていかれてしまう。

 AIの話になると、必ず話題になるのが「AIに仕事を取られるか否か」だ。

 筆者も、周囲の人たちと「あの仕事はAIに取って代わられる」「意外と、ああいう仕事もAIでよくなるらしいよ」なんて話でひとしきり盛り上がった。

 田邉氏も「世界は今後、AIによる大転換期に突入していく」と語る。

つまり、今後は次のような時代がやってくると想定されるのです。

・知識があるだけでは生き残れない
・ToDoで乗り切っていたことが通用しない

こんな時代、社会で活躍するために必要なのはどのような力でしょうか?
それが、算数力。すなわち「考えることが好きな力」です。(P.21-22)

「算数力=考えることが好きな力」とは、一体どういうことだろうか。

初めての課題に楽しみながら対峙できる力

 超文系な筆者からすると、「算数力とは計算力」というイメージが強い。

 しかし、どうやらそれだけではないようだ。田邉氏は算数力を次のように定義している。

【算数力】…情報処理力、論理的思考力があるのはもちろん、「考えること」が大好きで、考え続けられる能力(P.4)

 田邉氏の「りんご塾」では、計算問題のように反射神経で解く問題ではなく、思考を巡らせないと解けない「頭を使う計算」やパズルを解くときのような「楽しさ」を大切にしているのだという。

 その中で育まれるのが「算数力」だ。

 パターンを暗記して解くわけではなく、初めて見る問題を、頭を捻りながら解いていく。

 解くこと、考えること自体を楽しめるようになることが、力になるのだと田邉氏は語る。

1人で初見の課題に取り組んで解決できる。
こんな人材は、仕事や人生で、どんなトラブルが襲ってきても乗り越えることができるでしょう。
しかも、それが苦ではない。「どうすればいいか」を楽しみながら考えることができるのです。稼ぐ力はもちろん、たくましく生きていく力があります。
これこそが、今後の世界で活躍するために、もっとも重要な力だと私は思います。(P.23)

予測不可能な時代を生き抜く算数力

 確かに、今は「先行きが不透明で将来の予測が困難な状態」と言われる時代だ。

 今後はさらに、AIの力も借りてより加速度的に変化していくことだろう。

 そんな時代において、誰も経験したことがない新しいこと、難しい問題に立ち向かっていくには、「考えることを楽しめる力」は不可欠だ。

 そして、楽しんで学べる力を付けるために有効なのが「小学校3年生までに、算数を楽しく学ばせて得意にさせること」なのだそうだ。

 なぜ小3までかというと、小3までの算数は非常に簡単だから。そして、4年生以降、急に思考力を問われる問題が出るようになったり、中学受験を予定している子は受験勉強が始まったりするからだ。

 そうなる前に、「自分の頭で汗をかいて考える」という練習をしておく必要があるのだ。

 時代の変化を楽しみ、新たな課題に向かっていける力が算数力を鍛えることで身に付くのであれば、その力を借りない手はない。

 まだ小学校低学年のお子さんがいる方は、ぜひ算数に力を入れてみてはいかがだろうか。

 不確かな時代を生き抜く力を付けてあげるのも、親が子どもにしてあげられる、大切なことの一つなのだから。