算数のテストのケアレスミス。「次は大丈夫!」で終わらせてしまって、なかなか改善に至らない子どもは多い。そのことにもどかしい思いをしている親は少なくないはずだ。10年連続で算数オリンピック入賞者を輩出している、彦根市発の知る人ぞ知る塾「りんご塾」。その塾長である田邉亨氏は、どのように指導しているのだろうか。田邉氏の初著書『「算数力」は小3までに育てなさい』の内容をもとに、その方法に迫る。(文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)
子どもが何度もケアレスミスをする理由は?
ケアレスミスで100点を逃す。親から見てこれほどもったいないことはない。
しかし、「もうちょっと気をつければ満点だったのに、もったいない!」と思うのは親ばかり。
子どもの方はどこ吹く風で、また同じミスを繰り返してしまう。そんな話を耳にすることはよくある。
一体なぜ、いつまで経っても子どものケアレスミスがなくならないのか。その理由を、田邉氏は「簡単に言うと、気が緩んでいる」と指摘する。
とはいえ、ケアレスミスを軽く考えているであろう子どもに、「本当の悔しさ」を味わわせることなどできるのだろうか。
全国模試を活用し、1問の重みを体感させる
田邉氏はそのための方法として、「模試など順位の出るテストで頑張って1回、100点を取らせればいいのです」と語る。
「いやいや、そもそも100点なんてそんなに簡単に取れるものじゃないでしょ」と思うかもしれないが、パターンを覚えれば良い内容なら、対策しておけば十分に可能とのこと。
では、100点を取ることがなぜ本当の悔しさを知ることになるのか。
その理由は、100点を取ると取った人全員が、1位になるからだ。たとえ、100点の人が200人いたとしても、全員1位。ここがポイントだ。
こういった試験で、ケアレスミスで1問間違えて95点だった場合、どうなるだろうか。
すると、子どもはもう同じ悔しさを味わいたくないし、100点を取って1位の快感をまた味わいたいから、それ以降はケアレスミスがないか、解答用紙をしっかり見直すようになるのです。(P.163)
確かにたった1問間違っただけで、順位が何十番も下がってしまうのは、子どもでも悔しいに違いない。
たった1問で大きく差がつく経験をする、というのは確かに「もっと気をつけよう」と思わせるには効果的だ。
知識と経験が増えればミスは減る
田邉氏は、ケアレスミスのもう一つの原因として「知識量が少ないこと」を挙げる。
これは、大人も仕事で体感したことがあるはずだ。
仕事でわからないことがあってつまずいていたことも、経験を重ねていくと以前つまずいていたことがすんなりできるようになった。そんな経験は筆者も覚えがある。
これを、田邉氏は「100の知識で100を目指そうとするとギリギリの勝負になるが、150の知識があれば闘いやすくなる」と説明する。
知識量が増えていくことで改善するケースがあるということを、親も知っておくとイライラしなくていいだろう。
大事なのは、子ども自身のマインドセット
このようにケアレスミスの理由と改善方法を聞くと、結局は子ども自身が「悔しい!」と思ったり、「もっとやりたい!」と感じたりする気持ちが勉強の成果に直結しているのだと実感する。
教育熱心になればなるほど、親は「なんでこんな簡単なミスをしたの!?」「もっと頑張りなさい!」とつい言ってしまうのかもしれないが、あまり効果はないのだろう。
英語のことわざに「馬を水辺につれていけても水を飲ませることはできない」というのがあるように、子ども自身に「もう間違わないぞ!」と思わせなければ根本的な解決にはならないのだから。
そういう気持ちになるような体験をさせたり、うまく声かけをしたりして、子どもの気持ちを前向きにさせていくことが、親が心がけるべきことなのかもしれない。