チケット30枚を押し付けられて
カードローンに手を出した新入行員

「ところで、なんで迫田先輩はあんなにチケット捌いてるんですか?もしや副業?」

「知らんか?迫田先輩のおやじさん、都庁のお偉いさんやねん。なんでも局長クラスだとか」

「局長?偉いんですか?」

「ああ、相当偉いらしいわ。うちの銀行、東京都のメイン(バンク)やんか?担当者なんかアゴで使われとるって聞いたわ」

「はあ、それで迫田先輩、うちに入行したわけですかあ…やってらんないですね」

「都の職員は、前売り券を捌くのにノルマがあるんやって」

「じゃあ、我々がその被害者ってことですか?」

「若手は皆やられてるみたいやぞ。新入行員の紺野君なんて、迫田先輩に30枚も押しつけられて、出身大学のサークルの後輩に転売し始めたゆうて」

「ひどいですね。あいつ、まだ給料安いのに30枚なんて!えっと…30かける2500円は7万5000円?そりゃあ可哀想ですよ」

「そのせいで、カードローンに手を出したゆうて」

「うわ!地獄の一丁目じゃないですかー。支店長に言いつけりゃいいのに」

「でけへんやろ、あいつ、お人よしやん」

「ほんと、弱い者には徹底的に強いなんて、銀行員の中の銀行員ですよね」

「そうやな…」

 都市博なんざ、行く気もさらさら起こらない。当時いた支店が、500キロ離れた大阪の吹田支店だからというのもある。吹田は言わずも知れた1970年大阪万博開催の地。今なお残る太陽の塔はここで万博が開かれた証しとして、モニュメントになっている。

 大阪万博の開催時、私はまだ幼なかったので行くことはなかったが、当時は高度経済成長期の真っただ中。毎年、平均10%台で国全体が成長を続けており、東京でオリンピックが成功したのだから、万博で負けたくないという関西人のプライドもあった。

 しかし、時代が変われば話は異なる。バブル崩壊間もない1993年、どこもかしこも不況不況と呟き、都市博に出展辞退を表明した大企業も少なくない。こんな時世にテーマもよく分からない地方博をやる意義などあるのだろうか。