ただ、やはり「お金(数字)しか見ていない」「これだけ買っておけばいい」過去の運用実績を見て「投資は儲かるもの」という単純化された思考でお金が動くことに対しては、これでいいのだろうかと違和感を抱く。

 株式型のインデックス運用は、「いかにお金を増やすか」という観点ではたしかに効率的だが、「社会にいい投資か」と問われると、僕の答えはノーだ。

 理由は2つある。

(1)玉石混淆(こう)の丸ごと投資

 理由の1つは、インデックス運用は、原則として対象となる株式指数に組み入れられるすべての会社の株式を購入するので、いわば玉石混淆の「丸ごと投資」であることだ。

 たとえば、日本のTOPIXの値動きに連動するファンドに投資をすることは、その指数を構成する2000社以上の株式に時価総額の比率に応じて投資をすることを意味 し、米国の代表的な株価指数であるS&P500の値動きに連動するファンドであればニューヨーク証券取引所など米国の株式市場に上場している代表的な会社約500社に投資をすることを意味する。

 そうした会社のなかには、もちろん社会から見ていい会社もあればそうでない会社も含まれ、あなたが好きな会社もあればそうでない会社もある。しかし「そうでない会社」に対して、投資家が経営について積極的なはたらきかけを行うことは難しい。

 会社経営の最大の目的は「人や社会の幸せの追求と実現」であると僕は思う。会社が「社会の公器」といわれる所以はそこにある。会社の業績の追求は、その経営目的を正しく果たすための手段にすぎない。こうした責任を自覚して努力を重ねている会社も間違いなく存在するが、そうでない会社も「丸ごと投資」の中には数多く存在するのが現実だ。

 投資家もまた、会社が社会を幸福にするための取り組みをサポートし、そうした努力をする会社の価値を、長い視点で高める役割を果たす存在であってほしい。しかし残念ながら、インデックス運用の場合、投資先の数が多すぎて運用者がそのようなはたらきかけを行うことは事実上不可能だ。また、市場指数に連動させるインデックス運用の運用者に期待される能力と、百戦錬磨の経営者とともに会社の本質的な価値をいかに高めるかについて対話を重ねる能力とはまったく異なる。