不妊治療はどのように進むのか

 さて、実際の不妊治療でどのようなことをするかをお話しましょう。
 基本的には、男性と女性のカップルで相談に来ていただき、そこから双方の検査を開始すべきです。しかし、まず1人で来られる女性の方も多いので、女性の検査からお話しましょう(男性の検査もこの連載で紹介する予定です)。

 男性の検査が精液検査だけなのに対し、女性はホルモン系統と、子宮・卵巣構造が複雑なため原因が複数考えられるので、挙児希望(子どもがほしいと思うこと)で来院した女性には、次の検査を一通り行ないます。

1. 月経の2、3日目
 採血をして低温期のホルモンの分量を調べます。また、超音波検査で、子宮の形、内膜の厚さ、ポリープや筋腫の有無を調べます。卵巣にあるAF(Antral Follicle:胞状卵胞)と呼ばれる、その生理周期に誘発したら育つであろう卵胞の数、卵巣の腫れや腫瘍もチェックします。

2. 月経の出血が止まってから排卵の前までの期間(28日周期の人だと、7~11日目くらい)
 造影剤を使った子宮卵管造影の検査で、卵管がつまっていないかをチェックします。腟から子宮に向かって細いチューブを入れ、造影剤を注入してレントゲンで撮影することになります。ちょっとした卵管のつまりは、この検査で治ってしまうこともあり、この検査をした生理周期以降、数ヵ月間は妊娠率が少し上がります。

3. 排卵の時期(28日周期の人なら14日目くらい)
 超音波で排卵の時期を予測し、夫婦生活をもってもらった後、理想的には3~5時間以内に来院してもらい、子宮頸管粘液(しきゅうけいかんねんえき)と精子の相性を見る検査をします。これはフーナーテストと呼ばれます。女性側に抗精子抗体などがあると、男性側の精子を外部からの侵入者として動かなくしてしまう場合があるので、そういった可能性をチェックするのです。

4. 排卵時期から、7日目くらい
 高温期のホルモンがしっかり出ているかのチェックとして、再度ホルモン採血をします。

 

 

 このように、不妊症かどうかのスクリーニングのために、女性には最低4回は来院してもらいます。

 検査の結果、問題点がわかったら、治療がはじまります。
 たとえば左右の卵管が両方とも詰まっていたら、精子と卵子が会う機会がまずないので、その時点で卵管再建のための腹腔鏡手術を検討するか、体外受精に切り替えます。また、ホルモン値に異常があったら、その時点でホルモンを補充する薬を出すなどします。そして精液の状況によっては、人工授精や体外受精へのステップアップがすすめられます。