すると、「今年から技術本部の体制を一新したことに加え、これから10年が生き残りを懸けた勝負になるということで、この大事な10年において、差別化した次世代技術にスズキが挑戦することをアピールしたのです」との答えが返ってきた。

 スズキといえば、40年以上にわたって同社を率いてきた鈴木修元会長のイメージが強く染み付いている。

 鈴木修氏のカリスマ性は言うに及ばないだろう。「浜松の中小企業のおやじ」を自称しながら、日本国内の軽自動車の地位を高め、いまや世界最大市場の中国をしのごうとするインドで圧倒的なシェアを確立させた剛腕の持ち主だ。その経営力はトヨタ自動車の豊田章男会長が「最もリスペクトする人物」とするほどだ。

 だが、その鈴木修氏がスズキの社長職を長男の鈴木俊宏氏に譲ったのが15年。その後、21年6月には会長職も退任し相談役となって、事実上、経営の第一線から身を退いたのだ。

 筆者は長年、鈴木修氏を取材してきたが、21年5月にはスズキ会長として最後のインタビューをした経緯がある。記憶力は衰えていなかったが、さすがの鈴木修氏も話しぶりが重くなっており、鈴木俊宏体制への本格的な委譲に期待を込める発言をされていた。